「髭、黒砂糖、鳥」

 黒砂糖を煮詰めて、黒蜜を作る。黒蜜を添えるための、抹茶のババロアはもう出来ている。


 ガールフレンドの白亜を、初めて自宅に招いた。俺はこんな日くらい無精髭を剃ったものかどうか、少し迷ったが、結局そのままにした。俺が白亜に初めて話しかけられたきっかけは、「ねえ、そのお髭、触っていい?」というものだったから。


 うちには鳥がいる。オウムのタツキ君だ。タツキ君はオウムなので、よく喋る。最近彼が覚えた言葉の一つが、白亜に聞かれたらかなりちょっと微妙な感じのするやつなのだが、まあやむを得ないといえばやむを得ないので、タツキ君にはいつもの通りに居間の自分のカゴにいてもらう。


 白亜が来た。緊張のおももちである。抹茶のババロアを出して、エスプレッソコーヒーを淹れる。コーヒーを淹れるのは得意なのである。


「これ、おいしいね」


 と白亜が言った。すると。


「ハクア、ハクア」


 と、まるで返事をするかのようにタツキ君が言った。あっ。やっぱり言ったか。俺は白亜と一緒に、赤くなった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る