「金木犀、紅葉、彼岸花」

「もんだいでーす」


 と、僕の幼なじみの少女、白亜が突然言った。季節は秋、中学校の教室の放課後。他には誰も残ってない。二人きりだ。


「次の三つの中で、正しいものが一つだけあります。それはどれでしょう。

 ・彼岸花の他に此岸花しがんばながある

 ・金木犀の他に銀木犀がある

 ・紅葉こうようの他に蒼葉そうようがある」


 うーん、と僕、玄野達樹は悩む。


「此岸花がある?」

「ぶー。まちがいです。正解は、銀木犀です。もともと、ギンモクセイの方が先にあって、キンモクセイの方が後からできたらしいよ」

「なるほど」

「では第二問でーす」


 まだ続くらしい。


「次の三つの中で、正しいものが一つだけあります。それはどれでしょう。

 ・白亜は金星に行きたいと思っている

 ・白亜は木星に行きたいと思っている

 ・白亜はいま達樹が自分のファースト・キスを奪ってくれるのを待っている」


 うーん、と僕はまた悩む。


「木星に行きたいと思っている?」

「ぶー。まちがいです」

「じゃあ、金星に行きたいと思っている?」

「それも間違いです」


 だそうなので、僕は金星でも木星でもない、青春の向こう側へと向かうことにした。スペースシャトルで飛んで行くような気持ちだった。

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