「牛タン、ふせん、ヨルダン」
「なぞなぞです。一日中日が昇らない国はどーこだ」
「冬至前後のノルウェー」
「ぶー。いちねんじゅう日が昇らない国じゃないとだめです」
「じゃあ
「よみのくに、って、どこ?」
「人間が死んだ後に行く世界。地下にあるから日は昇らない」
「はくあも死んだらそこに行くの?」
「そうかもしれない。実はパパにもよく分からない」
「でもなぞなぞのこたえはぶーです。それじゃありません」
白亜の父、達樹にはなぞなぞの答えくらい分かっていたが、「昼でもヨルダン」というしょうもない洒落を白亜が自分から口に出すのを待っててやるくらいの甲斐性のある父親なので自分から余計なことは言わないのであった。
「こたえは、ヨルダンです!」
「おおー」
「ヨルダンてどんな国?」
達樹はここではたと困った。職業上知らないではないが、ヨルダンを取り巻く現下の国際情勢を正確に簡単に簡潔に説明するなんてのは大人相手でも難しい。まして白亜は幼児だ。
「イスラエルと不戦条約を結んでる国だよ」
「ふせんじょうやく?」
「けんかをしないってこと」
「そっかー」
「ヨルダンの人は何を食べるの?」
「何を食べるだろうな……豚肉は食べないな、基本的には」
「ぶたにくは食べないの? ぎゅうにくは?」
「牛肉は多分食べる」
「はくあの好きな牛タンのシチューもたべる?」
「それはどうだろう……難しいな」
たまの休日に子供の相手をして過ごすのは、外交官として忙しく飛び回る達樹にとって貴重な時間であった。
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