手の中のボール。上へ 上へ
やまくる実
第1話
丸い弾力のあるこのボール。
このボールの出会いは僕が三歳の頃だった。
すぐ転んでしまう鈍臭い僕に、父親が少しでも運動神経をつけさせようと、誕生日にプレゼントしてくれた。
お父さんの顔ぐらいあるこのボールはまだ木の葉ぐらいしかない僕の片手では上手く掴む事も出来ない。
僕はいつもボールを抱え上げる様に包み込む様にもっていたんだ。
ターンターンターンッ。
ボールがコンクリートからの反発力で軽い音を立てながら軽快な音を鳴らす。
僕はただ下に投げて両手でそのボールを突いている。
まだ大きく上に放り投げたり、そんな事はできない。
だけど、僕が上手く投げる事ができなくてもこのボールは待ってくれる。
<<大丈夫 大丈夫>>
そうボールが呟いてくれる様に
ターンターンと音が鳴る。
光に反射しながらクルクルクルクルボールは回る。
下に下に、軽快な音を立てて。
お父さんは三歳の誕生日にボールをくれた。
僕はいつか、力一杯、君を空の上へ、上へと。
無限の可能性を感じさせるように、そんな気持ちになる様に上へ上へと放り投げよう。
お父さん。
僕に大事な大事な、このボールをプレゼントしてくれてありがとう。
そのボールが今、僕の初めての友達の手の中にある。
「ほら、投げるぞ! 受け取れよな?」
知君から投げられたボールはクルクル回りながら綺麗に放物線を描き僕の手元に。
ヒカリと共に。
手の中のボール。上へ 上へ やまくる実 @runnko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます