第18話
「え?――え?カタギリさん?――エトウさんは?え?」
ガイヤくんが混乱しているのが分かる。
「ごめんなさい!」頭を下げて謝ろうとした、その時。
「うわぁぁ……っ!」
ガイヤくんが叫んで倒れてしまった。
「ど、どうしたの、ガイヤくん?!」
すぐガイヤくんに駆け寄った。
ガイヤくんは頭を抱えて息も苦しそうに呻き続けている。
一体、何が。
とにかく救急車を呼ばないと!
スマホを持って、119を押そうとした。
「無駄ですよ」
背後で声がした。
ガイヤくんは私の前にいる。
後ろには、誰もいないはずだ。
有り得ない声の正体を確かめようと振り返った。
そこには、女の子がいた。
金髪の縦ロールに大きな赤いリボン。
フリルが沢山ついた水色のエプロンドレスを着た碧眼の女の子。
「あなた、あの雑貨屋の……?」
姿見を購入したお店にいた女の子だった。
「もう、何してるんですか?まだ全然道具を使ってないうちに
私の言葉なんて聞こえてないように女の子は不満そうに言った。
道具?タブー?
「ね、ねぇ!何言ってるの?無駄ってどういうこと?ガイヤくんはなんで苦しんでるの?」
「彼の苦しみは、ペナルティですよ。貴女が
「死ぬ……?呪いですって……?もしかして、鏡の力を見せたせい……?」
「まさしく。このタブーなら踏みにくいだろうと思ってたのに、なんで見せちゃうんですか。まだ全然力が集まってないじゃないですか」
「なんなのよ……。そんなことよりガイヤくんを助けてよ!」
「えー……。なんで私がヒトなんて助けなきゃいけないんですか。そんなに治したいなら、貴女が治せばいいのです、
「ウィッチ……?私に治せるの?どうしたらいいの?!」
「簡単です、口から呪いを吸い出せばいいんですよ。えーと、Schneewittchen……、snow white、日本語ではなんて言うんでしたっけ。王子が姫を口付けで救うのです」
口付け……!
ガイヤくんの口にさっと顔を近づけた。
「ただし」
女の子が強い口調で言った。
「曲がりなりにも魔女の貴女なら確かに呪いの吸出しも可能でしょう。しかし完全に覚醒していない貴女では、この程度の力でも受け止めきれないでしょう。分かりますか、自分の命と引き換えになるのです」
「嘘……」
「嘘じゃないです、本当です。本当だから止めたんです。貴重な東洋の魔女に、みすみす死んで欲しくないんですよ。ヒトなんて捨て置いて、私と一緒に国に帰りませんか?まだまだ少ないですけど、同胞たちが待っています。向こうでなら、貴女の力も完全に目覚めることでしょう」
「全然……全然分かんない……!何言ってるの?!」
「困ったなぁ……、未覚醒だと記憶もないのか。魔法使い、魔女。知ってるでしょう?貴女が訪ねたあの店は、魔女でないと来れない場所なんです。私は魔女を集めて、やることがあるんですよ。だから貴女にも来て欲しいのです。東洋の魔女はレアなだけに、力も強いと聞いていますし」
「そんなの知らない!私は魔女なんかじゃない!ガイヤくんを助けて!」
「嫌です。ヒトが魔女に何をしたのかもお忘れですか?冗談じゃありません」
「じゃあ、私が……!」
「死んじゃうって言ったでしょ!」
構わない。
私のせいでガイヤくんが死んじゃう方が嫌……!
意を決して、ガイヤくんの唇に口付けをした――。
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