第9話ー雪が光った!

 違いました。やっぱり仲良しさんじゃないんですって。ブランは輝竜といって「魔石」を作ることのできる力を持っているそうです。石に輝きと魔力を与え、その魔力を魔術師たちは石から引き出して使うんですって。だから、魔術師たちはブランを大切にすると同時に、常にどこにいるか見張っているって。輝竜がよその国に飛んで行ったまま帰らなかったりしたら大変でしょ?だからね。ゲルードはブランの魔力ととても相性が良くて、小さな魔石でも大きな力に変えることが出来るそう。だからこの国一番の魔術師。でも、ものすっごくプライドが高いので、自分の魔術師としての価値がブランの魔石に左右されるのが許せないって。それで、何かというとブランに突っかかってくるんだって。


(やっぱりなんか変な人だなぁ)と黒ドラちゃんは思いました。せっかく相性が良いのなら、もっとブランと仲良くすればいいのに。魔術師が何をする人なのかは知らないけど、竜を弾き飛ばすようなあんな罠を空に仕掛ける力があるんなら、きれいな模様でも描けば良いのに。


 でも、どうしてブランは人間に魔石を作ってあげるんだろう。黒ドラちゃんは不思議に思いました。

「なんで、魔石を人間にあげるの?約束ってどんな?」

「それはね、それは……僕とこの国の王様だけでした約束なんだ。他の人間は知らない」

「内緒なの?」

「うん、ごめんね。他に喋ってしまうと、約束に込められた力が失われるんだ」

「へー、力を籠めるの?約束ってすごいね」

 黒ドラちゃんは感心しました。そんな強い力の秘められた約束なんて、黒ドラちゃんはしたことがありません。せいぜい「明日もお散歩しようね!」ってドンちゃんと約束するくらいです。


 そこまで考えて、黒ドラちゃんは「あっ!」と叫びました。

「どうしたの?」

「あたし、ドンちゃんに雪をお土産にするって約束したんだ!」

「ああ、そうだったね。ここにくるまでに余計な時間を食っちゃったし、そろそろ帰りのことを考えなきゃね」

 ブランはそういうと、黒ドラちゃんを連れて岩穴の出口の方へ向かいました。出口の近くには雪が積もっています。ブランが雪を魔力で操って何かを作り始めました。あれ、なんかお耳もついている。これってひょっとしてドンちゃん?

「はい、出来た!冷気の魔力を籠めてある。持ってみてごらん」


 すごく不思議です。


 ドンちゃんそっくりの形をした透明な入れ物の中で、雪が降っているような感じです。

「これ、バラバラになったりしない?」

 黒ドラちゃんが不安になって聞くと

「大丈夫。このままドンちゃんのところまで持って帰るんだ、って強く思ってごらん」

 黒ドラちゃんは、目の前のドンちゃん雪をドンちゃんに見せている姿を想像しました。ドンちゃんが目を真ん丸にして、そして飛び上がって喜んでいます。

「うん!思った!」

 黒ドラちゃんが言いました。その瞬間、ドンちゃん雪は七色に輝きました。

「わあ、すごい!今、光った!」

「黒ちゃんの魔力がこの中に入ったんだよ。これでドンちゃんに見せるまでは、溶けないよ」

「ありがとう!きっとドンちゃんすごく喜ぶよ!楽しみだなあ」

 黒ドラちゃんは、もうドンちゃんのところへ帰りたくて帰りたくて仕方が無くなりました。ブランは黒ドラちゃんのそわそわした様子を見て、笑いながら言いました。

「送って行くよ。また無礼な魔術師が待ち伏せしているといけないからね」

「ありがとう、ありがとう、ありがとう、ブラン!これすごーくキレイ!」

 まあ、黒ドラちゃんの耳には入っていない見たいですけどね。


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