第10話ー帰ってきたよ

 帰り道で、黒ドラちゃんたちは罠のあった森の上を再び通りました。行きの時には気付きませんでしたが、下を見ながら飛んでいると、森の中に鎧のキラキラがまだたくさんいることに気付きました。あ、あの白いひらひらはゲルードでしょうか。

 黒ドラちゃんは「ブラン!気を付けてね」と言いましたが、「大丈夫、もともとあいつの魔力はよくわかるんだ。行きはちょっと浮かれていたから気付くのが遅れただけで……」下を睨みながらブランが答えます。

 その時、森の中でゲルードのマントがひときわ大きくひらめきました。何か魔力が使われたことが、ブランと黒ドラちゃんにもわかりました。一瞬びくっとしましたが、次の瞬間、空にはピンク色の花びらがたくさん舞っていました。

「わあーきれいだねぇ。これってゲルードがやってくれたんだよね?」

「ふんっ気障な奴め」

 なぜかブランは不機嫌そうです。

「ありがとーっ!」

 黒ドラちゃんはゲルードに向かって空の上からお礼を言いました。行きもこうしてくれたら良かったのに、とちょっっぴり思いながら。


 そして、マグノラの住むという白い花の森を通り過ぎると、もう黒ドラちゃんの森はもうすぐです。黒ドラちゃんは手の中のドンちゃん雪を大切に大切に抱え直しました。

 さあ、もうすぐ森に入る、という時です。

「黒ちゃん、僕はここまでにするよ」

 ブランが突然言いました。

「え!?」

 黒ドラちゃんはビックリしました。てっきりブランもドンちゃんのところまで行ってくれると思ったからです。

「一緒にドンちゃんのところへ行こうよ!ドンちゃんがビックリして喜ぶ顔一緒に見ようよ!」

 黒ドラちゃんは一生懸命誘いましたが、ブランは首を横に振りました。

「森の中に入ると、僕は黒ちゃんと一緒じゃないと迷っちゃうんだ」

「じゃあ、一緒にいれば良いよ!」

「でも、そうするとまた黒ちゃんは僕を森の外まで送らなきゃいけなくなっちゃう」

「う……良いよ!」

 ブランはまた首を振ります。

「今日は疲れたろう?それにドンちゃんには雪だけじゃなくて、話したいことだってたくさんあるんじゃない?」

 そう言われると黒ドラちゃんは何も言えなくなりました。確かに、ドンちゃんには聞かせたいお話がいっぱいいっぱいあります。

「う、うーーっ」

 黒ドラちゃんは困ってしまいました。

「あのね、今日はここで帰るけど、また遊びに来るよ。その時またドンちゃんと黒ちゃんと一緒に遊ぼう?」

 ブランが優しく言ってくれます。黒ドラちゃんは、森を見てブランを見て手の中のドンちゃんを雪を見て、それをグルグル三回ほど繰り返して、ようやく「うん」と言いました。

「また……絶対来てくれる?」

「もちろん!黒ちゃん、僕が森で迷っていたら迎えに来てくれる?」

「もちろん!」

 黒ドラちゃんも笑顔で答えました。ブランがそのままそこで見ていてくれるというので、黒ドラちゃんは森の中に入って行きました。


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