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「私としましても、流石に殿下の歳になって我が家のことを知らぬというのは、と思っておりましたが、その内アンジェリカ様をこれまで以上に蔑ろにしているような言動が目立ち、ましてや私に粉をかけにお出でなさったのでこれはと思いまして」

「なんと……」

あまりのことに陛下が絶句なされていますが、馬鹿は――いつも通りの馬鹿な顔ですね。


「本来なら先に陛下へお話すべき事案でしたが、殿下は粉をかけに来てからというもの、私のもとに何度も何度もお越しになられてましたので……先に王太子妃たるアンジェリカ様に相談したところ、私どもで穏便にどうにかしよう、となったのですが、力及ばずこのような結果となってしまいました。申し訳ございません」


そう。彼女はこの国を統べるに相応しくない人間を排除する為。私は、王太子妃として――というのは建前で、本当はこれ以上の胃痛を回避する為。利害の一致により、手を組んだのです。

「アンジェリカ嬢……」

「陛下……私は王家に嫁ぐことは、ザラークの血を継いで生まれた女の使命として受け入れておりますし納得もしております。相手が男性として、そして王族として如何かと思うような方であっても、その血を継ぐものである限りはと」

「何だと!? 私を愚弄する気か!」

遅いですわ。明らかに遅うございます。

「ですが、流石に限度というものがございましょう。陛下、ご英断を」

「そうだな。この騒動において、一切の責はこの愚息にある……そして、それが王族であり、我が子である以上、私が罰を与えねばならん」

「責など、」

「黙れ!王族に生まれたものとしての責務を感情で放棄しおって!」

この期に及んでまだ自分は悪くない論を展開する馬鹿に、陛下も痺れを切らしたようです。

「衛兵よ、この馬鹿を北塔へ放り込んでおけ!沙汰は追ってだ!」

と叫ばれました。少しは大人しくしていればあんな所へ行かなくて済んだでしょうに……哀れな人。

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