第7話:王国騎士格
「よくやりました、ハインリヒ、十三頭のボスを瞬殺した事、誠に見事です」
後見人の私が王国騎士団長三人を差し置いてハインリヒを褒めたので、彼らは苦々しい表情を隠しません。
もしこのままハインリヒが王国騎士団に所属するのなら、騎士団長に眼をつけられて辛い騎士団生活になった事でしょう。
ですが王国騎士団に所属しないハインリヒには関係がないことです。
私が自由にハインリヒと会えなくなる、王国騎士団への所属を認める事など絶対にないのです。
「アレッタ嬢、王国騎士団の資格試験に口を出すのは止めて頂きたい」
「あら、ごめんなさいね、手塩にかけて育てた側近なので、つい喜びを口に出してしまったのよ。
それとも、この程度の腕では栄光ある王国騎士団の騎士資格試験は合格できないのかしら、団長殿。
それはそうよね、誇り高い王国騎士団の騎士資格試験は厳格だものね。
身代わり受験や親の情実などあり得ない、不正の入り込む余地のない試験だもの」
私が全て知っているぞと言う意味を込めて団長を睨んでやったら、三人とも真っ青になっていました。
極端にできの悪い息子を騎士団に入れるために、身代わりを使って試験を合格させた団長と、賄賂を貰って黙認した二人の団長。
どちらもウィーン公爵家の諜報能力はよく知っていますからね。
でももう少し厳しく追い込んでおきましょう。
「団長の御子息も騎士団に入られ、異例の早さで騎士長になられたのでしたね。
後学のために一度お手合わせ願おうかしら、それとも機会があれば決闘でも申し込ませて頂きましょうか。
陰で私の事を色々と言っているのは知っておりますのよ。
何なら今の無礼な言葉に対してウィーン公爵家として宣戦布告しても宜しいのよ」
「申し訳ございません、私が身分も実力もわきまえず、無礼を働いてしまいました。
この通りでございます、どうぞご容赦願います」
「そう、だったらちゃんとした評価をして頂けるのですね。
私は不正が大嫌いですの。
腐った性根の屑が、栄光ある王国騎士を名乗るのが許せないのです。
まして団長の職責を盗むなんて、耐えがたい怒りを覚えてしまいますのよ。
ハインリヒは王国騎士の資格がありますの、それとも能力が不足していますの」
「十分の能力をお持ちでございます」
「今直ぐ王国の役に立てる人材でございます」
「強さだけなら、騎士長の力はございます」
「そう、それはよかったわ。
王国騎士団とウィーン公爵家が合同で戦う場合に、指揮を誰が執るか問題になるといけませんから、互いの実力を確認させていただきたいわ。
ではそうね、ハインリヒと団長の御子息を戦わせていただけるかしら。
それとも、団長自身が戦って下さるのかしら」
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