第8話:男爵資格
私がほんの少し強く脅かしたら、三人の団長とその息子達が病気を理由に騎士団を去りました。
いえ、騎士団に所属していた半数が病気や老齢を理由に退団しました。
私が腕試しに試合を申し込んだり、陰口を理由に決闘を申し込んだりするかもしれないと、恐れをなして逃げ出したのです。
あまりにも情けなくて涙が流れそうです。
「団長、我が家の騎士団が王国と同じように腐ってはいないでしょうね」
私は思う所があって、わざとウィーン公爵家の騎士団長に確認しました。
「大丈夫でございます、アレッタお嬢様。
公爵閣下が常に騎士団員の能力を確認しております」
「団長が誠実なのは分かっているけれど、公爵令嬢として鵜呑みにするわけにはいかないから、定期的に私とハインリヒが確認します、いいですね」
「御意のままに」
私はハインリヒが公爵家内で侮られないように、騎士達と戦わせて実力を知らしめてやろうと考えたのです。
騎士達から恨まれる可能性がある事は理解していましたが、将来は私の婿にする心算ですから、結局は妬まれ恨まれるので気にする必要はありません。
私はハインリヒをダンジョンで鍛えながら、ウィーン公爵家の騎士、騎士長、騎士隊長を叩きのめして実力差を明らかにしました。
「ハインリヒ、頑張るのですよ、危険だと思ったら無理せず逃げるのです。
生きていれば何度でも試験は受けられるのですからね」
五人の王国騎士団長が呆れた目で見ているのは分かっています。
私の脅しで総入れ替えになった王国騎士団長ですから、私が試合や決闘を申し込む可能性があるのを知っていて団長職を受けた、それなりの実力者ばかりです。
だから私におもねるような言動などしません。
厳格にハインリヒの実力を確認して、男爵に相応しいか判断してくれます。
ダンジョンの税収が王国収入の柱となっている現状では、それを生み出してくれる冒険者の存在はとても大きいのです。
軍事的にも、強い冒険者が王国に忠誠を誓ってくれている事は大きいのです。
そのため強大な階層ボスを斃せるような冒険者には、名誉的な騎士位や爵位を与える制度が整っています。
今ハインリヒが戦おうとしている階層ボスは、単独で斃せば男爵位が与えられるほど強大な存在です。
パーティーを組んでなら何度も斃しています。
ここ最近は、補助魔術なしでも単独で斃せるようになっています。
昨日も何度も斃して最終確認をしました。
ですが、試験当日に実力が発揮できない事があるかもしれません。
心配で心配でいても立ってもいられないのです。
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