19話 マジックドレイン

 マジックドレイン




 偽の迂回ルートを書いた地図を置いたまま、作戦室を離れ、少し時間をおいて戻る。そして、端っこの方にカモフラージュして置いていた動画撮影装置を確認。やっぱり二人がそれを見ているわね。そして、それの写真を撮って何処かに連絡しているところも見えたわ。よし、これで道中に襲われることなさそうね。そのまま順調に敵基地に向かって進む、いや、戻る。そして、基地に着いた。本当に何事もなく。けどついた時間は、18時半と少し。少し、時間が早いわね。


「とりあえず、暴れて、敵の本丸を目指すわ」


「OK、行くよ!」


「う、うん。了解」


「「「機工装着!」」」


 皐月が機工を海に向かって、


「機工出港! 皐月、文月! 対空砲火準備! これで、敵が返ってきにくくなったはずだよ」


「そうね、ありがとう。で、今は何を装着しているのかしら?」


「ん? この機工は水無月だよ。まあ少し慣れていない装備だけど、多分大丈夫だよ、だって同型艦だし」


「分かったわ、対空出来ないことを忘れないでね」


「うん」


「けど、あれがあるとあたしも空飛べないかも」


 あ、雛の言う通りかも、空を飛べる人たちは脅威を感じるわけだし、どうしたものかしら?


「あ、それなら大丈夫だよ。敵のみに発動するようにできるようになったからね」


「あ、そうなんだ。分かった、ありがとう」


「じゃあ、目指すは、この砦の天守閣。そこまでに出来るだけ敵をかき乱して生きてたどり着くわよ」


「「うん」」


 砲撃を開始。まだ壊れていなかった見張り塔を破壊。空に向かっている機銃とかも破壊。このまま足を進めていく。けど敵は本当に少ない。敵半数が奇襲に向かっていたみたいね。それにしてもそんな人数に奇襲を受けていたら、みんな無事では済まなかったわね。


 30分後には中央に聳え立つ日本の城のような建物に着いた。


「なんで、この城は和風なのかしら」


「興味ないよ」


 と雛。速攻で天守閣飛んで行った。


「僕は気になるけど、考えている場合じゃなさそうだね」


 皐月の言う通りだわ。とりあえず突撃することにした。時間はもう夜を迎えていた。


 城に入った瞬間に船の方から轟音。少し覗くと、なんか巨大なアミが私たちの船と違う空母を上から潰していた。踏みつぶした? いや飛んできたかのように津波も起きている? 私たちの味方は皆ここを目指していたから大丈夫そうだけど、どういう事? なんでそんな荒業に? そう考えつつも、城の天守閣を目指す。しかし、2階に上った瞬間、


「撃てー!」


 その声と共に皐月は持っていた武工、イージスの盾を構え、私の前に出てくれた。盾が弾をはじく音が大量に聞こえる。これじゃあ、先に進めないわね。私は急いで階段を戻る。


「私も武工を出すわ! ってあれ?」


 あれ、あれ? なんで!


「どうしたんだい! なんか武工を装備できてないけど!」


「武工が動かないのよ! いや、通信機能とかは動いているんだけど、物質構成排出ができないの」


「僕の方も、追加で出すことができないよ。ついでに言うと、戻すことすらできない」


「ど、どうしようかしら。ってあまりにも動揺してるわね、私たち。でもどうしたものかしらね」


「とりあえず、下に降りて、体勢を立て直そう」


「そ、そうね」


 皐月の言う通り、階段を降りたら、敵が待ち受けていましたとさ。


「お、おわた」


「無理だ……終わった」


 皐月の発言と共に、轟音。上の階で何かあったみたい。雛かな? でも、もうどうしようもないよね。機工の砲撃もなぜか撃てない、唯一使える武器は苦無と皐月のイージスの盾のみ、苦無を投げるしかないならしょうがない!


「二人とも! 武工も機工も使えるからあきらめないで! マジックドレインなら壊したよ! 君たちの帰りを待っている人がいるんだよ! だから、こんなところで死なないで、紀光たちに顔向けできるように頑張って!」


 上からの声、誰かしら? でもそれが本当なら、なら!


「武工装備!」


 出来た! これなら、いける! 


「皐月、いけるかしら!」


「うん! これなら!」


 砲撃を開始。寄らば斬る! 遠ければ撃つ! 死ぬ物狂いで攻撃を続ける。私は下の敵を、皐月が上の敵をやっつけて、敵は撤退した。


「ふう、なんとかなった。大丈夫? 皐月」


「うん、大丈夫だよ。さっきの声って、多分」


「そうだね、多分、アミだよね」


 二人ともへたり込んでいると、そこに噂の、


「バレたか。まあ隠してたわけじゃないけど。でも何とか助けられてよかったよ。じゃ」


 と言って、速攻でアミは階段の上から姿を消した。まあ、上に向かっただけだと思うけど。とりあえず、


「私たちも上を目指すわよ。皐月、行ける?」


「うん、大丈夫だよ。と言うより、雛の方が心配だよ。先に上空から侵入したもんね」


「ええ、急ぎましょ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る