2話 アポロンと悪魔

アポロンと悪魔




ショートカットを使用して、これで、転移成功。広がった視界には鬼がいた。


「あれが、アミって子? 見た目鬼なんだけど……」


「うん~間違いないよ~。でもなんか苦しそ~」


「とりあえず、あの子を助けないと。後ウエアを探さないとね」


どうしてか、アミと男の敵二人は見合ったまま動かない。ならば、


 「助けに来たよ。ウエア」


「それにアミちゃん~」


アミがこちらを向く。たしかに、しんどそうな顔をしているわね。


「光かな」


「皐文さんに~、言われてきたんだよ~」


「で、ウエアはどこなのよ」


「ああ、あの女か? さっき燃やしてやった。そこの鬼を庇ったんだから、そこの鬼を憎め」


「馬鹿言わないで! そんなのやった奴が悪いに決まっているじゃない! だからあんたを憎むわ」


なんで、庇った相手を憎まなくちゃいけないのよ! 助けてあげた人を憎んで、助けた本人がうかばれるわけないでしょ。助けたのだから、救ったのだから、その人に生きてほしいと思ってやったのだから、その気持ちを尊重したいし、悪いのは、殺した人に決まっているでしょ。


「このアポロン様を憎むだと! 無礼千万だな! マーズ、アイツら殺すぞ!」


なに、あの偉そうなのすごくむかつくわ。


「ああ、悪いが、儂帰る。代わりに、あの鬼に命令しといてやる。その女どもを殺せ。帰る理由は少々面白いことを思いついたのでな」


「まあいい、俺様一人でやれるからな」


「じゃあ、私を解放してよ!」


「お前はマーズの玩具だからな俺にはどうしようもない」


「私は、あの男を倒すわ。ウエアの仇だもの。あなたは、あの子を救ってあげて」


「うん~。分かったよ~」


「機工装着!」


装着完了。今から砲撃を開始するわ。


「狙い撃つわよ!」


空にいる敵に向かって砲弾を撃ち込む。だけど、


「ふん、他愛もない。こんな砲撃寝ていても避けられるわ」


え、砲弾を殴り落された! どうなっているのよ! でも、


「こっちなら!」


機銃を起動、撃ちまくれ! それでも、すべて、今度は槍で落とされる。


「ど、どういう事よ?」


「ふん、つまらん、敵にもならんな。貴様には教えてやってもよいか、俺様は、未来予測ができる。つまり、貴様の攻撃はすべてお見通しと言う訳だ」


成程、攻撃が予測される位置に、攻撃を先置き、そして砲弾のほうは信管を外して殴り落したみたい。人間業じゃないわね。どうしよう。勝てる気がしないわ!


「よし、これなら!」


「お、復活したね~。ってサモンエッグが増えている? 見たことないやつだね~しまっとこ~」


ん? あっちは決着ついたのかしら。なら、2対1でごり押せる!


「ふん、業腹だが、1対3はさすがに不利か。ここは退いてやる。ありがたく思え」


次元転移したわね。思わず、奮起していたことを身体が思い出して、その必要がなくなったことを感じて、足が震えだした。


「た」


「た」


「「「助かった」」~」


3人は同時にぺたりと座り込んだ。


「何アイツの圧。3人でも危なかったかわね」


「そうだよ~。戦ったら、この中の二人は死んでたね~」


「変な予想しないでよ! まあその予測はわかるけど」


「キヲぬクのハ、ハヤイでス!」


な、何事よ。聞いたことある声と、無い声が混ざり合っている気がするわ。頑張って見てみると、そこには、前とは様子が違うウエアが臨戦態勢でこちらをにらんでいた。


「ってウエア? 生きてたんだ! よかったわ」


「アノコロサレルしゅんカンニ、ワタシはジカンのゲンソクヲオコナイマシタ。ソシテ、アクマとケイヤクシ、イキナガラエマシタ」


「え、てことは、貴女も憑かれているのかしら」


「トイウことで、ショウブでス。ワタシをたおしナサイ!」


「どういう事!」


「ワタシがアなたタチにウラミガナイトでも?」


「そっか」


「そうよね」


「いや~あたしには恨みないよね~」


「でも、ここは私に任せてよ!」


やっぱり、ウエアの様子がおかしいわ。悪魔? さっき戦ったけど、そいつに憑りつかれたのかしら。だとすると、死んでない分、僥倖な気もするけど、戦うなんて……。けど、アミは立ち上がる。戦わない道はないのかしら?


「イエ、チガイまスネ。ウラミはありマセン。タダあなたタチのニクガタベタイ!」


「え」


ど、どういう事かしら、それに、あの大剣、見たことある、あの悪魔の物だわ。それに、人の死体を拾い上げて、


「あの人、人肉食べるの!?」


「いえ、話した時は、菜食主義者だったわ! 嘘だったのか、それとも、何かあったのかだわ」


「成程」


何があったのよ! ってどう考えても、悪魔のせいね。となると、あの悪魔が憑いていることになるわね。


「それにしても、助けに来たのに、助けてもらったわね」


「そうだね~。あたしたちは~もう体力限界だよ~」


光はそのまま横になっちゃったわね。私もなろうかしら?


「あ、小さくなったわよ。アミって子」


「へ~、小さくもなれるんだ~」


多分18㎝ぐらいになっているわね。あの子? はかなり能力頼みの戦い方しているわね。少し心配だわ。


「巨大化だよ!」


あっぶないわね! 押しつぶされるかもしれないじゃない!


「ちょ! ここで大きくなられたら、私たちどうなると思っているのよ!」


「はい」


ビックリしたー。かなりでかくなったわね。それにしても、でかいわね。そのデカくなった躯体で押しつぶすように殴りかかっていったわ。それでもやっぱりというべきかしら?回避されて、腕を、


「痛ったあああああああ!」


やっぱり、斬られたわね。ああいうダメージで、こんな怪我したくない! そういう意志に持っていくことで、戦闘能力は上がっていくものだから、少し勉強だと思って見ておこうかしら?


「ど、どうしよう、え?」


 何か独り言を話し出したのかしら?


「久しぶりだな! ベルゼブブ」


ん? 次は口調が変わった? なんで?


「もらったぜ!」


「ソンなこブシ、アタルワケナイダロ」


翼が生えた! 飛行魔術を使えるって事ね。けど、なんでさっきまで使わなかったのかしら?


「ハネダトォ! シカしデかしたゾ。これで、俺様はこの体を完全に支配した!」


喋り方が、悪魔の口調に変化が終わっていっている。つまり、意識を完全に乗っ取られているてこと?


「それなら、上々。これで、おまえを、封印出来る!」


ウエアの頭にアミの左手が触れる。


「何をする! 同じ悪魔だろ! ルシファー!」


「違いますわ。わたくしは、六角 小麦。人間ですわ!」


「やはり、本物では……」


 あれ? あの子の名前アミではなかったかしら?


「これで、チェックメイトですわ。悪魔に対する魔術は悪魔にとらわれてからは、ずっと考えていましたわ。実践は初めてでしたけどね」


何とかしたみたいね。ウエアは意識を失っているみたいだけど、大丈夫かしら? そうこうしているうちに、海上の音も聞こえなくなってきたわね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る