四章 賢者の吸石

1話 転移成功?

「それで、あなたの探している人の元にはひとりで行けそうなのかしら?」


「いいえ、無理よ。だって、場所がその端末が無いと探せないもの」


私たちと一緒に第4世界に飛んできた女性に、訪ねたところ、そんな答えが返ってきた。


「ちなみに、私の名前は、真井 ピコよ。宜しくね。能力は自身のコピーの作成。ただ、寝たり、気を失うと消えるけどね、ちなみに、コピーは一撃大きいの貰うと消えるわ」


「私は黄井 式。まあ短い間だろうけど、宜しく。能力は、体外からの魔力干渉不可ね」


「僕は藍井 皐月だよ。宜しく、能力は、ホログラム作成だよ」


と青髪で三つ編みの私の仲間、皐月が挨拶する。


「あ、あたしは、赤井 雛。ど、どうぞ宜しく、の、能力は、体内で魔力生成が不可能な代わりに、体外魔力の操りが得意なんだ」


赤髪でツインテールのオドオドした少女が、恐る恐る挨拶した。


「宜しくね。で、手伝ってもらってもいいかしら?」


「うん、いいよ。と言うか、最初っからそんな話だったよ。式は何でそんな事を確認しているのかな」


「そうなんだけど、この人会ったばかりだから、いまいち信用が無くて、訊いといたほうがいいかなって思ったのよ」


「そうね、私もあなたの事は分からないから、とりあえず、話をしましょ」


少し不穏な空気を醸し出していた私と、真井を収めようと思ったのかわからないけど、


「そ、それか、演習する?」


「戦闘狂は静かにしときましょうね」


 「ご、ごめんなさい」

 

 あ、雛が暗い顔を浮かべているわ。ああ、悪いことしたわね。


 「あ、ごめんね、貴方基本気が弱いの忘れていたわ」


「う、ううん。いいよ。と、ところで、ここ何処?」


「転移先は、座標は別の場所に出来ないから、多分ここは前にいた世界と同じ地域よ。文のいた町で合っているはずなんだけど、たしかに、ここは……」


水の上に出ていた。というか、素早く皐月が駆逐艦出してくれたから助かったわ。そうじゃなければ、皆水の中だったわね。


「それはそうと、話しましょ。あなた達はなんで、あの少女の言葉を信じたの?」


「それは私たちの恩人と同じ存在らしいからよ」


「どういう事?」


「私たちは、紀光研究所で育てられたの。それで、同じ存在の紀光グループの人なら信じられるのよ」


「ああ、確かに、紀光研究所の企業の中には孤児院もあった筈ね。でも、それだけで紀光研究所に従っているのかしら?」


「え、どういう事かしら。あ、皐月は、船の進路任せるわ。近くの陸に着いてくれればいいわ」


「分かったよ」


と皐月は頷く。それと同時に、船は動き出して、近くに見える陸地に向かっている。


「あの会社、謎だらけなのよね。それに、黒い噂もあるし」


「ど、どんな噂?」


そこに、雛が割り込んでくる。まあ私も気になるからいいけど。


「あ、でも、あの噂はあなた達が此処にいるってことで嘘だと証明できるわね」


「だ、だからどんな噂?」


「あー、孤児院に入った子たちが、違法な実験で、出てこれなかったり、実は子供たちで軍隊を作ろうとしてるとかって話があるのよ」


「あー、否定したいけど、前半しか否定できない」


「え、こういうのって全部否定する所じゃないの!」


「それが、私たちも、戦えるように、訓練もしていたし、どう見ても、私たちが今持っているこれも戦う為のものだし」


と、機工を見せる。彼女は少し手で触れると、


「これが戦闘用の道具? とてもそうは思えないけど」


真井は手を放して、そう言う。


「確かにこのままだとそう見えないけど、この中には、昔あったと言われている、戦車、軍艦、戦闘機が入庫されているのよ」


「どうやって入っているのかしら?」


いや、機工をつんつんしないでよって言いたいけどそれを飲み込んで、


「圧縮しているのよ」


「圧縮?」


「あ、あの、式」


「ん?」


なんか、雛が手招きしている。付いて行くと、耳もとで、


「た、多分、真井の世界では、こ、この世界が、作り物だって習ってないはず……だよ? だ、だから、そこは伏せておいたほうがいいかも」


「ええ、分かったわ」


そう答え、私は、真井との話に戻ったわ。


「え~っと、何の話だったかしら?」


「圧縮の話よ。なんなの圧縮って、まるで」


「ああ、圧縮ね、圧縮。圧縮はあれよあれあの技術で」


助けて、雛。私、どう言えばいいか分からない。


「ま、魔術だよ。魔術の一つだよ」


「そうなんだ。じゃあ、私でも使えるのかしら?」


「の、能力に分類されるもののはずだから、む、無理かな」


「え、そうなんだ。確かに、能力分類なら無理ね。でも能力なら、それに近い魔術はあるはずよね。それも無理なの?」


「うん、それも難しいかな」


そこに皐月も会話に入ってきた。


「でも企業秘密だから、教えれないっていうのが本音だよ」


「分かったわ。じゃあ次はあなた達が私に聞きたいことを聞く番よ」


う~ん改めて聞こうと思うと、聞きたいことが多すぎて困るわね。


「とりあえず、なんでその師匠を追っているのかしら?」


その質問に、真井は顔を暗くして、


「先に魔術を習っていて、私に教えてくれたから、師匠なんだけど、本当は幼馴染なのよ。簡単な任務で、一年で帰ってくるはずだったのよ。でも帰らない、だから、不安になって、聞いて回っていると、任務先は元いたの世界のここだって聞いて、急いで行ったのだけど、それでも、遅くてこの通り、2年かかったわ」


「それは……、つらいわね。でも生きているって分かって良かったわね。で、その幼馴染を探すために、飯野って人を探すわけね、了解。そういう事なら、手伝うわ。二人ともいいわよね」


「う、うん、いいよ」


「わかったよ。で、端末はどの方向を向いているんだい。後、陸に着いたよ」


「っとちょっと待ってね」


私は端末を確認、アプリを起動。同じ端末が、インド辺りにある事が判明した。


「インドね」


「インドって結構遠いね」


「どうやって行ったのかしら?」


「み、右の方だよ。た、多分」


皆口々に文句を言う。って待って、


「雛、右って何?」

 

「な、何って聞かれても右は右としか」


「いや、式は、どうして右なのかって話だと思うよ」


「昔のギャグにそんなのあったわね」


「へー、そうなのね」


「な、なんか、ご、ごめん」


「いや、私の知識不足だったわ。ごめん」


そんな会話をしているうちに、船は、港町に着いたようね。


「着いたよ。今降りる準備をするから待っててね」


「わかったわ。でもなんでここの世界は転移した場所が、海の上だったのかしら?」


と真井が気になっているみたい。


 「た、たしかに、見、水のないところに、で、出ればいいのにね」


たしかに、二人の言いたいことはわかるけど、


「実を言うと、無理なのよ。同じ場所にしか出られないのよ。高度は移動可能だけど、緯度経度は無理ね。私じゃどうやってもいじれないわ」


「え、じゃあ、転移先が海なのは、この世界では元居た場所が海だから?」


「その通りよ。まあ、他の世界の地球儀と見比べると、前の世界の横須賀が、少し広いんだけどね。多分、土地の埋め立てとかがあったんじゃないかしら」


私の説明に皆少し疑問を持っているみたいだけど、


「まあ、分かったわよ。それで、此処から、どうやってインドまで行くのかしら?」


「っと、話し込んでるところ悪いんだけど、降りるが準備できたよ。さあ行こう」


そうして、私たちは港に降りたんだけど、その後、


「やあ、君たち。異世界から来たのかい?」


「どうしてそう思うのかしら?」


「いきなり船があんな所に現れたら、そこに転移してきたとしか考えられんだろう。ほかには、いきなり戦争を仕掛けに来た異世界ぐらいだが、上陸してきたってことは違うだろうからな」


「成程、その通りよ。で、ここの転移窓口は何処かしら?」


「ああ、それなら、横浜まで出るといい」


「ありがとうね。じゃあ行こうかしら」


「それにしても、お嬢ちゃんたちは、ちゃんと転移窓口まで行くのか。偉いな、あんなものあってないようなものなのにな」


「まあ、そうね一応行っておかないとってだけだしそんなに偉くはないわよ」


そう言って私たちは横浜に向かって行くことにした。

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