8話 反省会と行先
反省会と行先
「……すまないね。まさか紫波が、裏切るなんて思ってなかったから、外に出たいって言うから、聞いちゃたんだ。そしたら、そのままゴトに付いて行ったんだ」
文の隠れ研究所に戻った私たちは、謝罪の言葉を聞いていた。
「な、なん、なんで、し、紫波様はゴトに付いて行ったの?」
雛がいつもより、口が回っていない。確かになんで? と私も思う。
「……確か、ゴトから連絡が入ったとか、あいつが、反乱したのは、あっしのせいだって、言っていたのを聞いたと聞いたよ」
「へ、どういう事。皐月?」
「それがね、式、伊和から聞いたんだけど、そんなことを紫波が言っていたらしいんだ」
「た、たし、確かに、そんな話、き、聞いたかもだけど、で、でも! でも?」
その言葉を聞いていた、他の紫波の子たちが、
「じゃあ私たちは、ゴトに付いて行ったほうかいいのかな?」
「でも、ゴトって良い噂聞かないよ」
「そうだね。でも……」
「決めたよ~。私は、ゴトに下るよ~」
伊和がそう決心する。すると、周りも、
「あ、私も」
「俺も!」
と声を上げだした。
「雛はどうする~」
「あ、あたしは、式たちと、い、いく」
「え! なんで~」
私も驚きを隠せない。そこまで仲良くなったわけでもないし、何かしたわけでもない。
「だ、だって、もし、紫波がゴトに愛想尽かした時に、助けてあげれる人がいないのはダメだよ。その時に、お、恩を感じているはずの、この二人が私といると、此処には来れるはずだから。そ、それに、もし、紫波が悪になったら、誰かが止めないとだもん」
「……分かったわ~。じゃあ、式、皐月、この大人しいけど戦闘狂の雛をお願いね」
「ええ」
「分かったよ」
「……話がまとまったみたいだね。じゃあ、君たちは強制退出&出入り禁止ね」
その言葉とともに、ゴトに着くと言った皆は消え、私たち3人と1人が残った。
「……君たちには少し頼みたいことがあるんだけどいいかな?」
「何かしら?」
「……結論を言うよ。太陽神を各世界から集めてきてほしいんだ。まず、順を追って言うと、ゴトの目的が分かったよ。あいつは生きたいんだ。一個人として」
「どういう事?」
「……簡単に言うとね。あたしたちの目的は、ある人たちをこの世界に戻すこと。けどそうなると、あたしたちの親機である紀光 神奈様が戻ってきて、意思統合して、意志統合し、最終的にはあたしたちは機能停止、又は、神奈様の思い通りに動く機械と化すんだ」
「え、それじゃあ、ゴトのほうが正義のような……」
「……けど、神奈様はそれを言ったわけでも、書いたわけでも、ましてや命令したわけでもないんだよね。それにゴトは、それを暴力で解決しようとしているし、あたしたち紀光シリーズに下された命令に反乱しようとしているんだ。それじゃあ到底正義ではないよね」
「うん、そうだね。でもなんで、その神奈って人が戻ってきたら、紀光たちの意思統合ができるんだい?」
「……それは、神奈がメインコンピューターだからだね」
「メインコンピューター? まるで、君たちが機械かのような言い草だね」
「……当たりだよ。あたしたちは紀光神奈が作った体のスペアだからね。それに自由意志を持たせて、自己改良したのがあたしたちなんだよ」
私たちは口を開けたまま動けないでいた。
「……で、あたしとしては、まず、紀光神奈様たちを救いたい。そして、その任務は違う人たちがやっている。エルピスを集めてあの世界への扉を開く、いや元に戻すを〝使う〟で、合意したんだ。君たちには、違う方向でお願いしようと思ってね。それが太陽神様だ。調べたところ、太陽神は本来、エルピス6人対太陽神1人で戦って互角だって言われている。まあ、一回それ以下の戦力で勝ったけどね。でもあれは、
「わ、分かった。でも、エルピスは7人だよね? 後、な、なんで、き、君は、神奈の味方をするの?」
「……ん? 簡単さ、あたしは話し合いで解決できると思っているからね。そして、エルピスは、最後の一人が太陽属性だから、太陽神に匹敵するんだよ」
「え、けど、話し合いで解決するような話なの?」
「……うん、けど、あの方たちが帰還するとなると、世界をガラッと変えるつもりだろうから、それが許せないっていうのもあるかもね」
「???」
「じゃあ、頼んだよ。あたしもここを引き払ってもっと深くに潜るよ。先ずは、君たちには……」
「話ぶった切って悪いんだけど、私のこと忘れていないかしら? 皐月」
誰? 何?
「あ、ごめん。忘れてたよ。文、少し悪いんだけど、え~っと名前なんだっけ?」
「私は真井 ピコよ」
「真井に、福留って人の情報が有ったら教えてあげてほしいんだ。ここの町で行方不明になったらしいんだけど」
「……どういう用件で来たんだい? 後魔術についての知識は有ったのかい」
「有るわ。だって、師匠はこの町から魔力を感知したって言って来たはずだもの」
「……成程、魔術排斥軍の者か。で、いつぐらいに来たんだい?」
「えっと、4年前に此処に向かって消息が途絶えたわ」
すると、文は目を瞑り、考え始める。数秒後、スゥッと目を開いて、
「……4年前に魔力排斥軍は、12回来ているが、姿を消したとなるとこの人だろう」
その言葉と共に、大型ディスプレイに映像がひとりでに流れ出した。男の人と女の人が戦っている。
「師匠!」
「……やっぱりあの女性が君の師匠かな。そうなると、ごめん。相手の馬鹿があっちの世界に送ってしまったよ」
「あっちってどこの世界かしら?」
「……ゼロの世界だよ」
「ゼロの世界?」
4人で首をかしげる。聞いたことのない世界だ。
「……別名ごみ箱だよ。さっきはなしに上がった、サン、太陽属性のエルピスがいる世界。不要なものが行く世界。送り込む術は難しいんだ。あたしにはできないよ。だから、行きたいなら、飯野って人を頼るべきだね」
「しょうがないわね。じゃあその飯野って人を頼りに行くから、居場所教えて」
「……今は確か、両立世界に旅立ったはずだよ」
「じゃあ私は行くとするわ」
「……少し待って貰えるかな、式たちの行く先も両立世界なんだ」
「ええ、いいわよ」
「……式、皐月、雛、三人で、先ずは両立世界の太陽神と会ってきてほしいんだ。そこの紀光はもういないと思うから、サポートはこの端末を渡すよ」
そういうと、文は何やらタブレット端末を渡してくれた。
「これは?」
「……異世界でも通信可能な端末だよ。まあ他の世界だと出来ているのかも知れないけど、まあ少し特別なアプリが入っているから持って行ってよ。後、それは飯野にも持たせてある。そして、それと同型機なら、探索機能で探せるようになっているから」
「分かったわ。たしか、4世界よね。って、その人を探すのに私たちも付いて行ったほうがいいのね」
「そうだね。じゃあ向かおうか」
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