11話 二人の気持ち

 二人の気持ち



「敵襲! 敵襲!」

その声により、僕は目が覚めた。時間を見た限りだと、約4時間半寝ていたようだ。僕はのっそりと起きあがり、揺れる床をものともせずに斧を取り、そーっと廊下へのドアを開ける。少し歩くと、皆が慌しく走り回っているのが見える。


「あ、さ、皐月さん。あ、あ、し、紫波様が、呼んでいます」


「わかったよ。何処にいるのかな?」


「そ、倉庫にいるって、言ってたよ?」


「わかったよ。行ってくるね」




麻酔を打たれて、眠っていたみたい。時間は今四時ごろ。ってお昼ご飯食べてない! ってそんな事はどうでもいいのよ! 右手に視線を向けると、そこには何もない。まだ手術の途中の様ね。腕の斬られたところを見ると、機械が付けられていて、そこは神経が通っている様な気がする。多分連結部分ね。しかし人の気配がない。どういう事?


「ねえ、紫波、いないの? 紫波!」


返事がない。ただの留守のようだ。


「まだ寝といたほうが良いわよね?」


上を向いたまま目を閉じると、大きな振動が私を襲った。


「何ごとよ!」


もしかして何か攻撃を受けている? そう考え跳び起きる。焦って、足がふらふらで、うまく走れないけど、何とかドアを開けられた。しかし、その瞬間私は開けなければよかったと後悔した。そこには地獄があった。いや戦場だ。戦場という名の地獄があったのだ。機銃がすべて空を向き、その空では、戦闘機が空を飛ぶ人とのような影と戦っている。それのどちらかが墜落して、海に叩きつけられる。怖い、怖い。怖い! 今すぐにでもここから逃げ出したい!


「あ、式! 起きたんだね。今、外は見ての通り戦闘中。君はここで待っているようにって、紫波が言っていたよ」


私は少しホッとする。こんな怖い場所に行かなくていいんだ。と心のどこかで思ってしまう。


「皐月、貴女はどうするのよ」


「僕も今は待機なんだ」


「今は? ってことはこの後戦いに行くみたいじゃない!」


あんな戦争の中に入って行ったら、死んでしまう。もし、皐月がその中に入っていくなら止めないと!


「うん、そうだよ。僕は行くよ。怖いけど、自分たちだけ隠れているわけにはいかないからね」


「けど、生き残る事が大切じゃない! こんな戦い、出ていって戦う必要ないわよ!」


「僕を助けてくれた君がここまで怯えるなんてびっくりしたよ。でも大丈夫。僕には機工がある。だから安心して待っていてよ」


「う、うん」


送り出してしまった。後悔しかない。けど、追いかけれる覚悟がない。怖い怖い怖い! 私は動けずにいた。

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