10話 手術

 手術



「……これは、成程。魔力によって、電気が通らなくなっているし」


私の全身をスキャンして、その結果を見ていた紫波が、私の右手があったであろう場所を観察して、そこに電気がバチバチしている棒を、


「ってなんで電気流そうとしているの! ちょ怖い怖い! 怖いわよ。そんなもの私に近づけないで!」


「……で、痛いし?」


「電気を流したら痛いに決まっているでしょ! 本当にそれ以上近づけないでよね!」


「……悪いが、もうすでに流してるし」


「へ? なんか痺れる様な気もするけど、手加減してくれているの?」


「……普通の人間だと、丸子下になるほどの電力だし」


「何してくれているの! めちゃくちゃ……痛くない?」


「……そうだし。こっちの検流計も何の反応も無いし。やっぱり決定だし。でもどうしたものだし、この魔術、解除するのに、10時間ぐらいはかかりそうだし」


そうなのね。けど10時間後には手術出来るなら、ってそう言えば、私いい物持ってるわよね?


「この苦無、使えるかしら?」


「……ん、苦無? あの苦無がどうしたし、君が手放さなかった、あの苦無」


「この苦無が、危険だからよ。けど、この苦無なら、きっと時間短縮できるわよ」


私は苦無をリールから取り外、せないので、そのまま診察台の端に置いた。それを紫波は何の警戒もなく持ち上げて、


「……成程、これ、成程! 確かにこれならいけるし! それにしてもこれは何処で手に入れたし?」


「育てられた施設を出るときに」


「……ああ、君が紀光研究所出身なのは知っているし。包み隠さず話して良いし」


バレてたの? でもそういえば、この人、何処か睦に似ている。


「貴女、もしかして、睦の関係者?」


「……ほう、睦の所の子か。その通りあっしは、睦と同じ存在、紀光 紫波だ。と言っても、今はもはや、違う存在だし、意志も、目的も変わっているし」


「そうなんだ、で、睦の研究所が襲撃された際に助けてくれた忍びの少女が、くれたのよ」


あれ、少し、やな顔した? どうしてかしら? まあいいわ。


「……成程、あいつが苦無をあげたって言っていたのは、君の事だったのか。じゃあ、手術を始める前に、君は義手と再生、どっちが良いし?」


悩む必要はない。だって戦うために腕は必要なのよ。ならば答えは一つ。


「強度の高い、義手を頂戴!」


「……リハビリがきついがいいかい?」


「問題ない!」


「……覚悟するがいいし」


私は麻酔薬を打たれ眠りについた。



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