5話 病院

 病院

 



 目を開けると、壁? いや天井があった。私を照らし出す光の球の数々、電球の様ね。つまり私は、何か見られている? ダメね、思考がまとまらないわ。


「確か、私刀の少年と戦ってて」


「目を覚ましたか。まの悪い奴め。もう一度寝ていろ」


何か刺され、瞼が重くなった。あ、これ寝てしまうやつね。


「起きて、式。起きて!」


「ん? 朝かしら?」


起き上がろうと、肩でベットを押すと、


「いだ!」


右側に転ぶ。ってか、このベット固いわ! 顔を上げると、皐月が、安心した顔で、此方を見ている。


「目が覚めたかい! もう、食べられないよ。とか典型的な寝言を言うもんだから、起きているのかと思ったんだけど、実際の所起きていたのかい?」


え、私そんな寝言言うの? 恥ずかしいんだけど!


「いいえ、寝ていたわ。で、なんで私は転んだの?」


「あ……、えーっと」


「それは俺が説明する。お前は、この少女に、事故で腕が斬られたと運び込まれたんだが、切り口が綺麗だったからな。おそらく、何者かに意図的に斬られたのだろう? それはどうでもいいが、問題は、その切り口、再生手術ができないことにある。どうなっているんだ? 電気信号が通らない! だがまあ、破傷風にならずに済むよう治療はしてやった。治療費を請求したいのだが」


「治療費の話は後でいいかい? 少し式と二人で話がしたいんだ」


「ああ、ちゃんと払ってくれるならな」


「うん、解ったよ」


その言葉を聞くと、黒い白衣(黒衣?)を着た先生はドアの向こうへと姿を消した。


「ごめん、式。僕がもっと早く、苦無を括り付けて、機銃を撃っていてば!」


「いや、皐月のせいじゃないでしょ。悪いのは斬ってきた敵なんだから」


「それはそうだけど」


「悪意を持ってきた敵から、人を守れないと、守った側の責任だと思うのはおかしな話よ。悪いのは悪意を持っている人間なんだから」


「ありがとう。それじゃあ、君の腕の話なんだけど、さっきも聞いたと思うけど、電気信号が通らないらしいんだ。おそらく、あの刀の呪いだと思う」


「それじゃあ、義手を付けるというのはどうかしら? 義手ならいけたりしないかしら?」


「ううん、義手も無理らしいんだ。その部分に電気信号が通らない。そして脳波で直接操ろうにも、なぜか動かない。まさに呪いだね」


「かなり、調べてもらったのね。じゃあ、私の腕はもう」


「ふっふっふ、そうとは限りません! あなた方には特別にいい情報をお渡ししましょう!」


「誰!?」


隣にあるカーテンの中にベットから声が聞こえる。いや、私と、皐月の二人にしてよ。せめて聞き耳立てないでよ。隣の病人。カーテンがガバッっと開き、どう見ても胡散臭い人物、仮面をつけ、タキシードを着た少女が現れた。本当に誰よ。


「ふっふっふ、私はしがない不審者。あなた方に、行ってもらいたい場所があるのです。そこに行って下さると、恐らく貴女は腕が治せるでしょう。どうです? この情報の見返りとして、私はこの端末を持って行っていただくだけでよいのです。どうですか?」


胡散臭すぎるけど、腕がない生活は考えられない。藁にも縋る気持ちだ。


「いいわ、乗ってやろうじゃない! で、どこに行けばいいのかしら?」


「日本海、そこに、所属不明の空母がいます。その空母にたどり着いてほしいのです。そして、そこの長なら貴女の腕を治せるでしょう」


「成程。それで、あなたはその船と交渉、攻撃、協力要請のどれかをしたいわけね」


「ほう? 何故そう思われます?」


「空母ってことは戦力はある。それも、そのあたり国が放っておくほどの。だから、貴女はそれを利用したい違うかしら?」


にやりとするタキシードの少女。目から上を隠すための仮面の様で、口は見えている。けど、なんで、ひょっとこなんだろう? かろうじて、巻いている手ぬぐいで認識できるけど、こういう場合、上に特徴のある、鬼とか、パピヨンマスクとかじゃないの? それにタキシードにまったく似合ってないし!


「判ったわ。藁にもすがりたい気持ちだし、行こうかしら」


「そうだね。でも大丈夫かい?」


「ええ、腕は無いけど、多分大丈夫よ」


「そっか、じゃあ行こうか」


「ああ、後治療費は私に任せてもらいましょう。なに、ちょっとした門出の祝いってやつですよ」


「? ? ?」


とりあえず、私たちは病院から出た。支払いはちゃんとしたみたいで、すんなりと出してもらえた。さて、どうやって海に出ようかしら!

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