4話 拘束された少女
拘束された少女
町に着くと、一目でその少女の置かれている状況が分かった。
「ひどい街ね。こんな映像流すほどの大事件じゃあるまいし。何故こんな映像が流されているのかしら?」
反吐が出る。それがこの町の第一印象だった。いたる所に映像パネルがあり、そこの映像に、その少女の姿があった。その下のテロップには、〝この藍井 皐月は南東一帯の家畜を殺し、建造物を破壊したため、死刑にする”と書かれており、さらに上にはあと2時間と書かれてある。これだけの設備、あの子の為に設置したとは考え難い。つまり、元からあったのだろう。何かを全体放映するために。そして、周りの人は、我関せずという感じで、日常生活を送っている。
「嫌な街ね。考えてなかったけど、助けるといっても、どうすればいいのかしら? 私はあの子と同じくらいの力なのよね、つまりあの子が捕まったってことは、私も捕まる可能性あるってことよね」
とつまり私も決死の覚悟で挑まないといけないわけね。
先ずは、人気のない、路地に入り、人払い機能を展開、テレビの映像の出元を探る。私はこういう作業は得意なほうだ。睦の作ったアプリケーションを走らせればいい、そのアプリの動かし方も熟知している。人払いの機能だって精度はいいはず。それにしても、これらすべて睦が作っていたけど、全部機工の中に入っているのは驚いたわ。
「お姉ちゃん、何してるの?」
「んー、今この映像が、どこで撮られているか調べているところよー。って誰?」
驚いた。なんでここに人が入ってこれるのよ。私はその声の方に振り向いた。そこには私より小さな6歳ぐらいの女の子がいた。小さい子なら問題ないかな。
「お姉ちゃん、正義の味方?」
「いや、クラッキングしてるんだから、世間的にみれば悪でしょ」
画面に向き直して、出所を探る。まあ操作の必要はないけれど、その少女をじっと見ているのは、私が後ろめたい事をしているという事もあり、ためらわれた。
「どっちでもいいよ、世間から見たらあのお姉さんも正義の味方じゃないもん。お姉さんはあの映像のお姉さんと知り合い?」
「いや、違うよ。ただね、ちょっと会ってみたいなって思ったのよ、あの子のお婆ちゃんに話を聞いたから」
「なら、お姉さん、お姉さんを助けて!」
思わず、また私は振り返る。そして、もう一度、ひと払い機能が効いてるはずなのに、なんでこの子は居るのだろうと、考える。よほど私に会いたいと思い、敵意がないからなのか、魔法に対する、対抗があるのか、解らない。恐らく前者なのだろうが、だとすると、私はこの子を知らない。となると、この子はこの状況を覆せる人間に会いたいと思ったのだろう。つまり、そこまであの映像の拘束された少女との再会を望んでいることになる。となると、彼女はやはり悪い人には思えない。
「お姉さん、聞いてる?」
私は映像の出所を確認。切断開始。どんな状況か、この子に聞く必要があるみたいね。
「ええ、聞いてるわよ。どうして彼女を助けたいの?」
「あのお姉ちゃんね、悪い事して無いの。それどころか私達を助けてくれたんだよ。あの時いきなり町が爆発してね、その時に、大きな壁を出してね、みんな助けてくれたんだ。で、町を爆発した人たちをやっつけたんだよ、一人逃げちゃったけど。けど、みんなお姉ちゃんを怖がって、そしてね、助からなかった人もいて、全部お姉ちゃんの所為にしようって、大人たちが言ってたんだ」
つまりは、何者からか分からない攻撃を受けた町を助けたのに、すべての責任を背負わされたってことかしら。
「わかったわ、今から少し行ってくるわ。だから、この事は秘密ね」
「うん!」
少女とはそこで別れ、私は機工と、今の検索結果を照らし合わせる。
「ビンゴ」
やっぱり、彼女は囚われているようだ。機工も近くあるようなので、それを頼りにビルに向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます