3話 平野の宿
平野の宿
私、黄井 式は、忍者の女の子と、博士こと紀光 睦の二人を探すために旅に出ていた。睦が、最後に連絡しておいてくれた、里親の元を立ち、海を越え山を越えた。しかし博士の情報は全然入ってこない。一体どこにいるのだろう、そう悩んでいると、機工が何かに反応したため、今はそちらの方向に向かうことにした。そして昨日から泊めてもらっている、宿を出るために服を着替え、いつものポニーテールに髪を歯車型のシュシュで結び、荷物を整え、チェックアウトをしに一階に降りる。そこには昨日と同じお婆さんが座っており、
「ありがとうございました。昨日泊めさせていただいた、3号室の者ですが」
「ああ、ありがとうね。こんなボロい所に泊まってもらって」
鍵を手渡し、お礼を紡ぐ。
「こちらこそ、いきなり来て、泊めさせて頂いてありがとう御座います。とてもよく眠れました」
「それでどこに行くんだい?」
会話が好きなのね。なら話さないと失礼ね。私はそれに答えるために、機工の反応を見て、
「えっと、ここから北西の方向に向かおうかと思ってます」
するとお婆さんは、どうしてか暗い顔をして、
「……お嬢ちゃんも、あれを見に行くつもりかい?」
「? あれって?」
「知らないなら、行かない方がいいとおばあちゃん思うんだけどねぇ」
どうも何か行われるらしい。気にならないのかと言われるとウソになる。それに機工が反応している所の情報を仕入れるのは必要だ。そして、それはあまり気分のいいものではないという事なので、情報収集のためにも、
「けど、私の探してる人の手がかりがそっちの方にあると思うんです、この機械が反応しているから、行こうかと思います」
まあこれ見せても、お婆さん分かんないわよね。じゃあ見せて、説明したほうが楽よね。。
「! その機械、なら余計行かない方がいいわぁ」
「お婆さんこの機械見たことあるんですか?」
「ええ、その機械を持った、私の孫がこのあたりで虐殺を行った罪で、今日、処刑されるのよ。その方向の町で……。でも、あの子がそんなことするはずないのにねぇ。けど、ばあは、その虐殺が行われていた時間は夜中だったから、寝ていたのよ。戦火はここまで来なかったからね。ばあは悔しんだけどどうしよもなくてね……」
お婆さん……。お婆さんは自身の手をぎゅっと握りしめて、大粒の涙をこぼしている。よほど悔しいし、悲しいのだろう。私はこのお婆さんの為に、その孫を助けたいと思う。それに、手がかりだ。
「なるほど、これは機工に反応するのね。おばあちゃん、私がその子、助けてみせるわ。名前を教えて」
「本当かい! あ、ありがとう。名前は皐月、藍井 皐月だよ」
「わかったわ。ありがとう、お婆さん」
「? なぜお礼を言うんだい?」
「仲間を見つけたからよ」
機工を持つ、睦の残した仲間、今助けるわ! そう意気込み、私は町を目指した。
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