「入るわよ。」

伴樹は慌てながら隠していた。何かまずいのでもあるのだろうか。…隠したものは何だろうか。

「勝手に入ってこないで。クソ姉貴。」

隠していたのは本だった。どんな本なのかな。

「…何の本。まさかと思うけど私の本こんなボロボロになるまで読んで無いよね。」

その本はボロボロだった。

「違うよ。誰にも言わないって約束できたならいいけど。」

「うんいいよ。」

こないだの事もあるから、お母さんにこのこと言って笑い話にしよう。

「…あのね。自分で買ったんだよ。姉貴のジャンルの本。」

あーなるほど。あまりネタにはできなさそうだ。そんなことよりも重要なことがある。

「ねえ伴樹もしこの薬を飲んだらいい事あるよ。」

私は笑いを堪えて真顔で言う。

「絶対に嫌。ロクな薬飲んできたから分かる。」

「そうね。例えば気になっている子いる。」

「いない。」

「またまた。あ、そっかじゃあ私。」

「ハッキリ言う。ヘドが出る気持ち悪さ。」

「こっちもお断りね。じゃあ勉強が出来るようになるよ。」

「正々堂々と勝負したい。」

「じゃあじゃあ、小説買う時恥ずかしくならないよ。」

「…うう。」

少しだけ揺らいでくれた。よしこのパターンで行こう。

「じゃあ、もしこの薬飲んでくれたら、私の本貸してあげる。」

「何にも無いんだな。…飲むか。」

そうしてなんとか飲んでもらった。二つ嘘ついているけど、一つは本当のことだからいいよね。

「眠い。」

「じゃあこれも飲んでくれない。ゆっくりと寝てね。」

これでちょっとは私に酷い仕打ちをしないだろう。


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