第18話 毒草のお話 困った王様

 完全にフレデリックは、ベッドの上に上がって来て私の横で転がっている。

 話の内容は毒草の事に移ってるけど。


「あの毒草は、前王が亡くなる前から城下町に入り出したのだ。最初に下町が汚染されたのだが、中毒者自体は中流階級の庶民を中心に広がっていってな。そのうちに、下位貴族にまで、廃人同様の中毒者が出てきて大変だったんだ」

 遠い目をしながら言っている。

「やっと、密売ルートを潰したというのに、まだあのような物を持ち込もうとしている奴らがいる」

「でも犯人は捕まったのでしょう?」

 持ち込んでいた商人たちは処刑されたのだし、公になっていないだけでビュッセル家の人たちも生きてはいないだろう。


「表向きはな。先ほどクライヴが言っていた内容は、誰に聞かれても構わないものだからな。本当の大捕り物はこれからだ。それから、『ビュッセル家が関わったのは、1度だけ、しかも書類上の手配しかしてない』そなたが、聞いて来た事は、裏が取れた。処刑された、商人たちも金に目がくらんだ小物ばかりだ」

「じゃあ、犯人は別に……」

「だいたいの目星は付いてはいるのだがな。ただ、この事件は表向き解決したことになってはいるから、はヒマなんだ」

は……って」


 あ、なんだか嫌な笑いを……。


「そんな顔をしなくても、今日は大人しくしておるさ。お姫様の添い寝でもして」

 フレデリックが少し私の方を向いて、頬を突いてきた。

「添い寝が必要なほど子どもじゃないです」

 私がツンとして言うと、私の上に覆いかぶさって来た。

「ふうん? それでは、女性として」

 いきなりの事で、私は固まってしまっていた。

 フレデリックが手のひらで私の首筋を撫でる。

「女性として扱うと怖がるくせに」

 含み笑いをしながらそう言ってきた。

「まだ、熱があるな」

 そう言ってフレデリックは元の場所に転がる。


「まぁ、婚礼の儀までは半年近くあるし、そちらの方は慣れてもらわねばな」

「え? えっと……」

 それは本当に夜伽の義務まで果たすってことでしょうか。成人の儀まで待つとかじゃ無く。

「側室……来るのは嫌なんだろう? 俺達の間に子どもさえいれば、他国の姫君が人質で来ようと側室にしない言い訳が出来るからな」

 そっか、お世継ぎ問題の為の側室だものね。だけど……


「あんな子どもの戯言、覚えていてくれたのですか? フレデリック」

「ああ。約束をした時、そなたは幼かったが、俺は成人していたからな。『そなただけを嫁にする』という約束をたがえる事はしないさ」

 さあもう寝なさいという感じで、今度は頭を撫でられた。


 このお方は本当にわからない。

 私の事が誰だかわからないうちから親し気に、好意を持って接してくれていたみたいだけど、最初にあった時点で恋愛感情があったら怖い気もするし。

 だって、私、4歳くらいだもの……。

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