第19話 フレデリックとの朝 おかしなシステム
朝起きたら、まだフレデリックが横にいて、そのまま朝まで眠ってしまっていた事に気が付いた。だけど、気分はすっきりしている。多分、もう熱も下がっているんじゃないかな。
「おはようございます。フレデリック」
横で転がっていたフレデリックに挨拶をする。
「おはよう。セシリア。熱も下がったようだな」
「ええ。おかげさまで……と、まだ早いようですね。アンが起こしに来ないなんて」
そう言ってベッドを降りようとした私をフレデリックが引き留め、後ろから抱きしめられた感じで一緒に寝転がってしまった。
「セシリアは、この国の事をどう思う?」
「アルンティル王国の事でございますか?」
「ああ」
どうって言われても……下手な事を言って、フレデリックの不況を買う訳にもいかないけど。
この信頼関係を作りにくい、肉親すら分断されてしまうシステムのことを言っているのだろうか。
代々、正室も側室も関係なく生まれてすぐの我が子を取り上げられ生涯会う事も許されない。
それにこの王宮だって、王宮入りを許された人達のほとんどが一生涯をここで過ごすことになる閉鎖空間だ。
でも、どこまで言って良いのだろうか?
「変だと思います。いくら暗殺や機密の漏洩を恐れているとはいえ、この分断の仕方では信頼関係が生まれにくいのではないかと思います」
私は内心ドキドキしながら言った。
「そう思うだろう? だけど、この状態になってから、我が国は無敵と呼ばれる様になったんだ。なぜだと思う?」
「そう……ですね。徹底された実力主義だからですか?」
私は少しホッとしていた。フレデリックは、この程度の事では不快に思わない。
「そう。国王ですらそうなんだ。誰から生まれたのか本人ですら知らないから、変なしがらみがない。誰が、同じ母上から生まれたのかすら分からないのだから」
「…………」
私は驚いて言葉も出なかった。
「俺は何人かの兄弟姉妹と信頼関係を築くことが出来たが、先代はそうではなかったらしい。それに、これだけのシステムを作っても長く続くと今回のようなことが起こる。国が滅びるのは何も戦争だけじゃないからな」
そういってフレデリックは、私を後ろから抱きしめなおし頭に自分の顔を擦り付けている。
「国力を削ぐ方法はいくらでもあるというのに、それが、古くから王宮にいる連中には分からないと見える」
フレデリックは、疲れたように言った。私は抱きしめてくれている手に自分の手を添えて意見を言う。
「変化を嫌いますからね。今が安定しているように感じていたらなおの事です。必ず今より良くなるという保証もない状態ですから」
「本当に、手厳しいことろまでかわらんな。そなたは……」
後ろで力なく笑った気配がした。
「わたくしに、どうしてこのような話を?」
「信用しているから……かな。これでも、人を見る目はあると思っておる。そなたは、グルダナにいた時からよく城を抜け出して、どんな身分の者とも分け隔てなく気さくに接しておったではないか」
「よくご存じでしたね」
「何度も、そなたを見にグルダナに足を運んだからな」
そっか……この方は、私の事をずっと見ていてくれたんだ。
「国の事は今すぐでなくて良い。ゆっくり考えてみてくれ。どうせ、俺達が生きている間には終わらない改革だ。だが、今回の事件の事は、少し協力してくれないか?」
そう言われて私は思わず身体をねじって、フレデリックを見た。
お顔がものすごく近かっけれど、そんな事が気にならないくらいワクワクした気分になっていた。
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