第16話 ビュッセル家事件の後処理報告

 気が付いたらベッドの中だった。

 朝の日差しがまぶしいって……今、何時? 慌ててガバッと起きたら、アンがそばに控えていた。

 なんだか頭がくらくらする。


「おはようございます。セシリア様。まずはこちらを飲んで下さいませ」 

 お茶?

「おはよう。アン」

 紅茶ではないわよね、と思いながら、渡されたコップから少し苦みのあるお茶を飲む。

 薬草の香りがするので、薬湯なのかな。


「お飲みになったら、まだ横になっていてくださいませ。昨晩倒れられたそうで、まだ熱もたこうございます」

「え? 熱?」

「こちらに来られてから、ずっと頑張って来られたのですもの、疲れが出たのでしょう。食欲がある用でしたら、何か軽いものをおもちしますが」

 食欲……は、無いわね。食べた方が良いのだろうけど。

「ありがとう。今は良いわ」

「そうですか。今の薬湯には、睡眠作用もございますので、ゆっくりお休みください。お昼にはクライヴ様がいらっしゃいます。その前に消化の良いものをお持ち致しましょうね。粉薬も出ておりますので」

「わかったわ」

 穏やかにアンが言うので、体も動かないようだし言われた通り眠る事にした。




 予想外に寝てしまっていたようで、少し遅い昼食をとり苦い粉薬を飲まされた。

 その後、すぐにクライヴと……フレデリックもやって来くる。

 慌てて起き上がろうとしたら止められたので、横になったまま報告を聞く事になった。


「セシリア様。おかげんの悪いところ失礼致します」

 クライヴが完全に仕事モードで言ってくる。

「いえ、かまいません」

 だから、私もお仕事と思って聞く体制に入る。

 クライヴは、それでも簡潔に報告を済まそうとしてくれていた。


昨日さくじつのビュッセル家は、 お家取り潰しと相成りました。また、ビュッセル家と取引のあった商人、その他数名は、本日処刑されました」

 処刑?

「なんで? 書類のミスだったのでしょう?」

 私の問いに、クライヴはなんの感情も見せず、淡々と答えてくれる。

 まるで、初対面の時の様に……。


「ビュッセル家がミスをしたとされる書類は、とある毒草を合法的に持ち込もうとしたもの。焚いて燻らせれば、気分が高まり、もしくは沈静化し依存性があるもの。常用すれば、幻覚が見えだし廃人になりかねません」

 そんな……。

「ミスとは言いましたが、確信犯です。後で他の者から聞かされるよりは良いと思いまして、報告いたしました」

「ええ。ありがとう」

 自分の声が、心持低くなっているのを感じる。なんだか、思っていたより事態は深刻だわ。

「わたくしの用事は、これだけでございます。それでは、セシリア様。失礼致します」

 そう言って、クライヴはフレデリックの方をチラッと見て退出していった。

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