04 ENDmarker2.

 電車。


 最初の電車で、五分くらいは留まっている。時間はたっぷりあった。


「駅弁と。飲み物と。限定品のグッズも買ってきました」


 彼女。たのしそうだ。


 それだけで、よかったのだと、思える。


「さあ。乗ろうか」


「あ、待って。その前に。さっきの続きを」


 彼女。手を広げて、抱きつく予備動作。


「ここで?」


「誰も見てないよ?」


「しかたないなあ」


 抱きつこうとして。


 後ろに思いっきり。


 引っ張られた。


 後ろ。


「おまえ。俺の結婚式に出ないぐらいならいい。そこはいい。しかたないからな。だが、女と。いまおまえら、お前。ふざけんなよ」


 親友がいた。


「い、いや。すまん。ええと。彼女と。出ていくよ。街を」


「お前さあ。その女性。誰だか分かって言ってんの?」


「あ?」


 彼女。


 びっくりして、固まっている。


「この子は。俺の。結婚相手」


「は?」


「女ふたりの結婚式なんだよ。俺と、彼女の」


「あ、そうだったのか。そういや結婚式も両方、今日だったもんな。全然気付かなかった」


 親友。そういえば、親友も。女性だった。普段から異性として意識しないように心掛けていたので、あんまり気にしていなかったけど。


「はあ。まあ、いいよ。親友のよしみでそこは、まあ、許してやる。行きな」


 電車。そろそろ、出発の時間。


 彼女と、ふたりで乗って。


 入り口で親友を見つめる。


「じゃあな。もう、会うこともないだろうけど」


 親友。


 絶望的な感情を、抑えこんで。笑顔を、作っている。


「好きだったよ。ずっと」


 心が、いたんだ。


 彼女と親友が、結婚するはずだったのに。自分の存在が、彼女と、親友の将来を。歪めた。


「すまん」


「なにが」


「おまえの結婚相手を。好きな人間を。奪っちまった」


「ばかだな。だからお前はばかなんだ」


 親友。涙。


「俺が好きなのはなあ。お前だよ。お前。ずっと好きだったのに。お前は、勝手に街を出ていきやがる。くそっ。好きだったよ。ずっと。ずっと一緒にいられると。思って、たのに」


 ドアが閉まるときの、独特の音。

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