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電車。
最初の電車で、五分くらいは留まっている。時間はたっぷりあった。
「駅弁と。飲み物と。限定品のグッズも買ってきました」
彼女。たのしそうだ。
それだけで、よかったのだと、思える。
「さあ。乗ろうか」
「あ、待って。その前に。さっきの続きを」
彼女。手を広げて、抱きつく予備動作。
「ここで?」
「誰も見てないよ?」
「しかたないなあ」
抱きつこうとして。
後ろに思いっきり。
引っ張られた。
後ろ。
「おまえ。俺の結婚式に出ないぐらいならいい。そこはいい。しかたないからな。だが、女と。いまおまえら、お前。ふざけんなよ」
親友がいた。
「い、いや。すまん。ええと。彼女と。出ていくよ。街を」
「お前さあ。その女性。誰だか分かって言ってんの?」
「あ?」
彼女。
びっくりして、固まっている。
「この子は。俺の。結婚相手」
「は?」
「女ふたりの結婚式なんだよ。俺と、彼女の」
「あ、そうだったのか。そういや結婚式も両方、今日だったもんな。全然気付かなかった」
親友。そういえば、親友も。女性だった。普段から異性として意識しないように心掛けていたので、あんまり気にしていなかったけど。
「はあ。まあ、いいよ。親友のよしみでそこは、まあ、許してやる。行きな」
電車。そろそろ、出発の時間。
彼女と、ふたりで乗って。
入り口で親友を見つめる。
「じゃあな。もう、会うこともないだろうけど」
親友。
絶望的な感情を、抑えこんで。笑顔を、作っている。
「好きだったよ。ずっと」
心が、いたんだ。
彼女と親友が、結婚するはずだったのに。自分の存在が、彼女と、親友の将来を。歪めた。
「すまん」
「なにが」
「おまえの結婚相手を。好きな人間を。奪っちまった」
「ばかだな。だからお前はばかなんだ」
親友。涙。
「俺が好きなのはなあ。お前だよ。お前。ずっと好きだったのに。お前は、勝手に街を出ていきやがる。くそっ。好きだったよ。ずっと。ずっと一緒にいられると。思って、たのに」
ドアが閉まるときの、独特の音。
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