第3話
河川保護工事と護岸工事は、村の工事会社の人がやるみたい。村の人が、来た。
あれ。
なんか、工事の人以外にも、誰か来ている。
あれは。
肝試しに来た子供たち。
魚釣りのおじいちゃんおばあちゃんたち。
散歩中の恋人たち。
どうしてここへ。
「たのもう」
おじいちゃんおばあちゃん。声を張り上げている。
「護岸工事と河川保護工事。待っちゃあ、くれねえかなあ」
肝試しの子供たちも、若い恋人たちも。声を出しはじめた。
「ここにはなあ。幽霊がおる。幽霊がおるんだ。たのむ。待っちゃあくれんかね」
あれ。
「おお。来てくれ。ここにおるで。ほれ。ほれほれ」
人が集まってきた。
工事の人たち。
あ、どうもどうも。幽霊です。
「これはたまげた」
「日中なのに幽霊は見えるんだなあ」
「触れるんすか?」
あ、どうぞ。さわれますよ。
「おお。さわれる。なんだこれ」
あ、わたしもはじめてです。見えてたんですね。
「何を今更。わたしたちの散歩も、子供たちの肝試しも、みんな見ていたじゃない」
あ、見えてた。
「わしなんか、深みにはまったところをたすけられたんじゃ。感謝してもしきれん」
その節はどうも。
「だからたのむ。工事をする前に。なんとか、幽霊のことを考えてやって、くれんか。後生じゃ」
え。
わたしのこと。
え。
えへへ。
うれしいなあ。
「おお」
「幽霊さん。泣かないで。肝試し、もうしないから。泣かないで」
ごめんなさい。
つい、うれしくって。
「わかった。工事は一旦やめる。寺の住職呼んでこい。あと、神社の神主もだ」
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