第9話 換装完了

銀河暦468年7月18日

リラソス宇宙港


エイン達がリラソスにきて4日目。機関などの換装は、ほぼ全てが完了するところまで来ていた。

「エイン!エンジンの換装はできたぞぉ!」

「ありがとな、ダランおじさん。無理言って悪いと思ってる」

「良いんだよこれくらい!…それより問題は他だ。機関から重力フィールドへの配管は完成したが、重力子レーザーへの配線はようやく主配管が出来たところだ。エネルギー供給はもう出来るが、バイパス管があと4時間ほどかかりそうだ」

「となると、今が10時過ぎだから…午後2時までなんとか教官を誤魔化す必要があるな」

「出港予定は何時なんだ?」

「午後3時30分ジャストには出るように言われてる」

「なら先にエンジンの試運転と機関士たちに慣熟させておくべきだなぁ」

「配管中なのにエンジン動かして大丈夫なのか?おじさん」

「まぁ重力バルブ閉じてる間は流れないから大丈夫だろぉ」

「んじゃそうするよ」

こうしてついに機関の試運転をする事になった。


エインが昼飯を食べた後艦橋に上がると、機関士たちを呼び出し試運転の手順と操作方法の確認を行う。

熱核放射エンジンと重力放射エンジンではでは扱い方が一気に変わるため、各艦の機関士たちは真剣にダランおじさんの話を聞いていた。


「…というのがこのエンジンの操作方法だ。基本的にエンジン始動後のシークエンス自体は自動だが、各部へのエネルギー伝達は自分らでやらなきゃいかん。そこをしっかり頭に入れといてくれぇ」

「「「「はい」」」」

「では始めようか。機関始動よーい!」

こうして13:30分、試運転が始まった。


「機関始動よーい!重力子圧力上昇始め!」

「機関圧力上昇!始動圧力到達まで30秒」

ここまでは良い、問題はここからだ。重力フィールドと重力子レーザーへのエネルギー供給の確認時に確実に教官にバレる。そこからが正念場だ。

「シス、教官は今どこに居るかわかるか?」

「少し待ってください…いました!リラソス宇宙港内の警備局です!」

「あそこからは艦が丸見えだな。…ということは、重力フィールドの展開でバレるか。明らかに練習艦が出していい出力じゃないしな。…先に兵装の確認からだ。主砲へのエネルギー供給始め!」

「主砲、重力子レーザーへのエネルギー供給始めます!…主配管へのエネルギー供給は正常!異常なし!」

「ダランおじさん!バイパス管の配管状況は?」

「もう少しだぁ!後15分くらいで終わる!」

「仕方ない。重力フィールドへのエネルギー配管を確認する。教官は?」

「こちらに向かって来てます!」

「このままやる。フィールドへのエネルギー供給始め!」

「フィールドへのエネルギー供給始めます!…フィールド展開!異常なし!」



「なんだあれは…」

俺の目が間違いでなければ、今自分が向かおうとしている艦は、生徒が動かす練習艦であるはずだ。

機関不良で修理していて、もうすぐ終わると聞いて戻ってこようとすれば、目の前の艦はまるで、軽巡洋艦以上のようなフィールド出力を出している。

明らかにおかしい。そもそも練習艦のエンジンはフィールドへエネルギー供給できる構造ではない。

練習艦の重力フィールドは元々フィールドにエネルギーを貯めた分しか起動できないはずだ。

だからフィールド周りを弄っている時も、フィールドへエネルギーを貯め直しているのだと思っていた。


これは艦橋士官たちを問いただす必要があるとヴァインは思うのであった。

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辺境宇宙士官の成り上がり英雄戦記 伊吹 希 @nozomin1227

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