第7話 訓練航海 〜リラソス寄港〜

帝国暦468年7月15日

練習艦隊第7艦隊

シャーリア星系リラソス外縁宙域


シャーリア宇宙港を出港して10日、練習艦隊200隻はリラソス外縁まで来ていた。なお通常の戦闘艦であれば、2日である。

入港待ちをしていると、“発、練習艦隊司令部”と書かれた映像ファイルが送られてきたので開けてみると、恰幅のいい教官が、

『練習艦隊の諸君!私は練習艦隊の総指揮を取るアドラブ准将だ。我々はこれよりリラソス宇宙港に入港する。これより先は、各艦隊ごとに行軍ルートが違う。よって、各艦隊に指導教員が乗り込み訓練を実施する。では健闘を祈る!』

とメッセージを残して映像は切れた。

「いやここで戦力分散かよ…いよいよ分からなくなって来たぞ」

「どうするんだ?エイン」

「いや、エンジン換装はこのままやろう。ついでに火器増設と重力装甲板も昨日メールで頼んである。取り敢えずこの練7艦隊の4隻は軽巡以上重巡以下の性能まで引き上げる予定だ」

「でもエインさん?乗り込んで来る教官にはどう説明するんですか?」

「あくまで機関不良でオーバーホールするという名目で、機関の全取替になるということにする。3日で終わるからそれまで騙せればいい」

「通常資材の補給はどうしますか?エインさん!」

「耳元で叫ぶな、シス…それは予定通りにやって良し。後部弾薬庫は重力子レーザーの配線を引くから演習弾の積み込みは前部弾薬庫にしてくれ」

「了解です!エインさん!」

「さて、それでは入港だ。両舷前進微速!」


リラソス宇宙港7番乾ドック

入港した自分達を待っていたのはダランおじさんたちの整備班だった。

「おぉエイン!待っておったぞ」

「ダランおじさん!迷惑掛けるね」

「作業は3日で終わる。火器関係無しなら明日には出れるぞ」

「いや、重力子レーザーと重力フィールドと機関の連携はしっかりつけてくれ。あと教官が乗り込むらしいから手筈通りに」

「分かっとるわい。整備名目じゃな」

「頼んだ」

そうダランおじさんに言うと、通信室に行き、

「シス、練習艦隊司令部に繋いでくれ」

「分かりました!」


『こちら練習艦隊司令部。どうかしたか?』

「こちら練習第7艦隊。機関不良のため応急整備を受けます。出港が遅れる旨報告します。以上です」

『了解した。乗り込む担当教官にも連絡し視察させる。安心しろ』

本当は視察されたくないんだよなぁ。

「了解しました。教官の到着は何時ごろになりそうでしょうか」

『すぐ派遣させる。3時間以内には着くだろう』

「了解しました。通信終わり」


「良いんですか?教官見に来て?」

「心配するなシス。と言っても面倒な事には変わりないんだが」

まぁなんとかなるだろ。故障報告書も作ったし。


目敏い教官が来ないことを祈るばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る