第4話 訓練航海 〜準備〜
銀河暦468年6月21日
帝国士官学校シャーリア分校
士官学校に入学して約2週間が経ったころ、朝のホームルームにて、担任の教官が連絡事項を伝えてきた。
「今日からの授業は、全て2週間後の訓練航海の為中止となる。諸君らは5人1組でグループを作り、軍学校の生徒200名が乗り込む練習駆逐艦の指揮を取ってもらう。2限までにグループを作っておくように」
「取り敢えずエインは俺とセレスと組んどくぜ」
「ああ。めんどくさいグループ作りは任せた」
「残り2人はどうなされるんです?ハルムさん」
「1人は目処がついてる。面白いやつだぜ?もう1人は了承がもらえるかはわからないが、なんとかなると思いたいね」
「変な奴連れてくるなよ?」
「1人はエインのことが大好きな奴だよ」
「シル・クライシスです!よろしくお願いします!エインさん」
「やっぱりお前か…嫌な予感はしたんだよ」
「何ですかその言い方は!嬉しいでしょう!」
シス・クライシス。軍学校時代にやたらと俺にくっついてきた奴である。
とにかくうるさいので毛嫌いしていたし、士官学校でも出来るだけ顔合わせしない様にしていたのだが、ハルムの馬鹿が連れてきてしまった。
「…んで?隣で隠れてるのは誰なんだ?」
「こいつはミル・クライシス。シスの妹で兵站学3位の秀才だぜ。まぁ気が弱いのが難点だが」
「よろしく…お願いします」
というなんとも言えない布陣で自分たちは練習航海に臨むことになった。
銀河暦468年6月25日
今日は自分達の艦隊がどのルートを通るのかの確認と役割の確認をすることになった。
「まず、ルートの確認だ。俺らはまず練習艦隊第7艦隊としてシャーリア宇宙港を出発する。その後シャーリア星系第4惑星リラソスの宇宙港を経由して帝国第5星系主星のカラメウスに行く。
そこで帝国極南司令部と連絡。その後シャーリアに帰還する。日程は1ヶ月の予定だ」
「質問してもよろしいですか?」
「どうしたセレス?なんでも言ってみてくれ」
「リラソスでは何かするんですか?経由するだけなら無駄に思えるんですが」
「リラソスではカラメウスまでの燃料や食料を補給することになっている。あくまで練習艦だから、戦闘艦と違って燃料が必要だからな」
補足までに説明するが、基本的に戦闘艦などは重力放射エンジンという燃料がいらないエンジンを使用する。対して旧式艦である練習艦は熱核放射エンジンを使用しているため、燃料補給が必要となる。
「まぁこれは建前だ。嫌な予感がするから、リラソスでエンジンを重力放射エンジン、せめて燃料補給がいらない核融合エンジンに換装したいと思っている」
「そんなことができるんですか!?」
「うるさいシス。少し親父のツテを使ってリラソスにあるエンジン製造会社にお願いしてある」
「そうか!エインの親父は軍関係の製造会社に勤めてたんだっけ」
「ハルムの言う通り。まぁ今どこに居るかは分からん。エンジンの換装は勝手にやっちゃダメなんだがそこは秘密な。
…さて次は役割分担だ。俺らは練習艦4隻、乗員200人を預かるわけだが、まず艦隊司令から決めようと思うがまぁ…」
「エインだな」「「エインさんで」」「…」
「だろうと思ったよ。んじゃ艦隊司令は俺がやる。残りも俺が決めるぞ。各参謀だが、まず作戦参謀はセレス。君に頼みたい」
「分かりました」
「次に戦闘指揮だが、ハルムに任せる」
「言うと思ったぜ。承ったよ」
「兵站管理はミル。お願いできるか」
「頑張り…ます」
「最後にシスだが…各参謀間の連絡とサポート。他艦隊との連絡も頼む」
「かしこまりました!」
「ではこれで行こう。旗艦は1番艦で行く。それぞれ当日に軍学校生の艦橋要員と顔合わせすることになるからそのつもりで」
嵐はすぐ側まで来ていることを知らず、エインたちは訓練航海に向け準備を進めていた。
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