第3話 帝国士官学校シャーリア分校(2)
エインが嫌な顔をしながら戦略シミュレーター室に入った理由はというと…
「エイン!今日こそは勝たせてもらうからな!」
「ほら来た。今日も面白いんだろうなぁ」
クスクス笑うハルムを置いといてエインは喚いている男子の元へ向かう。
「今月4回目ですよ、アルス元殿下」
「その呼び方はやめろと言った!」
この喚いている男子はアルス・アイハミアと言うのだが、シャーリアが王政だった時の王家の血を引く元王子である。
「静かにしろ!授業を始めるぞ」
戦略科の教官が入ってくると、ようやく静かになった。
「今日は戦略シミュレーターで模擬戦闘をしてもらう。こちらで対戦相手は組ませてもらった。名前を呼ばれたらシミュレーターにいくように」
どうせあの元王子の手で俺の対戦相手は決まってるんだろうなぁ
「まぁ受けてやれよ。どうせ勝てるんだから」
「そこまで言うなら変わってくれても良いんだぞハルム」
「それは遠慮しとく」
チクショウ!コイツめ逃げやがった。
そもそも元王子が突っかかってくるくるようになったのは、最初の模擬戦闘の時に4個艦隊を、何も考えずに突っ込んで来たから補給を切って勝ったら、『卑怯だ』と言ってキレてきたのがきっかけである。
俺なんにも悪くない。
『戦略シミュレーター第45番。シチュエーションα、模擬戦闘を開始する。状況開始』
さて始まった元王子との一戦。大体向こうの動きは分かるが一応念のために…
「偵察艦をα-1、β-1、c-1に派遣せよ。艦隊を二分して単横陣に再編。前列に装甲艦と戦艦、その後ろに砲艦を配置せよ。二分した艦隊はそれぞれα-3とc-3に移動」
「偵察艦派遣します」
「陣形再編します」
俺の言った指示を元に艦隊が動いていく。さて元王子はどうするかな。
「突撃陣形を取れ!先手必勝だ、向こうの体制が整ってないうちにβ-3(初期位置)に突撃する!」
「全艦突撃します」
「β-2に敵偵察艦を発見!」
「全艦攻撃せよ!撃て!」
「敵偵察艦退却します」
「このまま突撃せよ!」
やっぱり馬鹿だった。予想以上に馬鹿ですぐ終わってしまうぞ。まさか他方面に偵察も送らず突撃してくるとは。
「敵がβ-3に入り次第攻撃を開始せよ。重力フィールドにエネルギーを送りつつ、前部に火力を集中、α-1とc-1から2艦隊で挟撃する」
「敵艦隊、β-1に入りました」
「打ち方はじめ!」
「攻撃開始します!」
「敵β-1に居ません!」
「そんなことあるわけないだろう!ならどこにいるんだ!」
「両舷より攻撃!敵艦隊です!」
「なんだと!ふざけるな!」
「どうされますか⁉︎」
「応戦しろ!撃て!」
「敵、重力フィールドを展開!こちらのレーザー射撃、弾かれました!」
「なぜこちらは通らず向こうのは通るのだ!」
艦の向きが横だからだよ。
艦の向きが縦か横かで被弾率も変わる。横であればその分フィールドを広く“薄く”展開することになる。
当然射撃分のエネルギーをフィールドに回せばある程度縦で展開する時と同程度にまでできるが、射撃不可能な時点で現実的ではない。
『アルス候補生の損耗率が60%を超えたため、エイン候補生の勝ちとする。損耗率は08対60』
「ふぅ。終わった」
「お疲れさん」
「また最速更新かな?」
「かもな」
ハルムと話していると泣きそうな顔でアルスが出てきた。
こちらを一瞥すると、顔を真っ赤にして自分の席に戻っていった。
なんだあいつ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます