シャーリア蜂起編

第2話 帝国士官学校シャーリア分校(1)

銀河暦468年6月6日

帝国士官学校シャーリア分校


士官学校では今日も士官候補生に講義が行われている。今日は戦史の講義が行われているようだ。

その講義中、生徒たちの中で1人爆睡しているのがこの物語の主人公であるエイン・アルフォートである。


「辺境惑星シャーリア。この星は大戦前まで自治惑星として惑星国家の道を歩んできた。しかし、大戦末期に帝国によって編入され今に至る。また連合との境界も近く、戦略的にも重要だ…聞いているか?エイン君。エイン。エイン・アルフォート!」

「は、はい!」

「…ちょうどいい。寝ていた君に質問だ。シャーリア軍が諸侯軍には応戦したのに正規軍に対してはほとんど戦闘を行わずに降伏した理由を答えよ」

教官がニヤニヤしながら質問するがエインは自信たっぷりに答える。

「シャーリア軍に対するメリットが違ったからです。諸侯軍はあくまで自領にしようとしていましたが、帝国軍は、保護国化し帝国軍の配備以外に手をつけないと約束したからです」

「…よろしい。座りたまえ」

教官が苦虫を噛み潰したような顔で着席を促すが、エインは首を横に振る。

「本当にそうでしょうか?シャーリアの艦艇群は防衛を主眼に置いて建造、艤装を受けていました。またシャーリア宙域防衛基地も帝国軍の攻撃を想定して防衛線を構築していました」

「ちょっと待ちなさ」

講師が止めようとするがエインは周りの生徒に講義するように続ける。

「戦後の試算では、諸侯軍と正規軍合わせて5艦隊分まではこちら側が抑えられたという試算が出ています。それを蹴ってまで降伏を選んだのには必ず政治的または経済的な取引があったと考えます。みんな分かるかな。この戦争における決着は軍事的な要因ではなく、政治的な要因が決めた。これがこの戦争における重要な点なんだよ。以上です、教官」

エインが話し終わると少し間を置いて生徒たちの拍手喝采でいっぱいになった。

教官の青褪めた顔を見ながらエインは満足した顔で眠りについた。


授業が終わり、次の授業に向かおうとすると、黒髪の女子と茶髪の男子が話しかけてきた。

「また先生を言い負かしたそうですね?戦史科の先生から嫌われていますよ?エインさん」

「戦史科の教官が間違ったことを教えるのが悪いんだよ。あの人らは本当に戦史研究しているのか分からん」

「俺はこいつの隣で聞いていたけどあの教官の言い負かされた顔は滑稽だったぞ。思い出しただけでまた笑いが出てきてしまう」

この叱りにきたのがセレス・フェリナという女子で学年主席を常にキープしている。隣で爆笑しているのがハルム・カルメイト。こいつは俺とほぼ同じ順位で腐れ縁。こいつらは士官学校入ってからの友人である。


「まぁさすが基礎戦史学と戦略概論だけ学年1位だな。教官に引けを取らない講義だったぞ」

「お前も寝てたのに俺だけ当てられたけどな」

「お前がバレるような寝方をするのが悪い」

そんな風に話しながら次の授業に向かう。次の授業は戦略概論。戦略シミュレーターを使った戦略の解説や士官候補生同士で戦う模擬戦闘などがある。

セレスは別の授業なのでハルムと向かう。今日は模擬戦闘の日なので、ウキウキするハルムと嫌な顔をしながら戦略シミュレーター室に向かうエインであった。

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