第4話 形意拳
「コフッ、コフッ、コフッ、ゴワァーーーーーーーーー!!!」
神様とお別れをし、目をつぶると意識が飛ぶような感覚の後、意識が戻った。どうやら成功したのか、俺は地面に立っている。そう、自分の足で立っているのだ。何という達成感。
「ジーン…ちょっと涙出来てきた。」
などとつぶやくがそういえばさっき何かの鳴き声が…
「ウォフッ!」
背後から何かが迫ってくる。
「バカ!あんた何ぼっーっとしてるの!しゃがみなさい!」
涙の滲んだ目を開けると、全身鎧の中世の騎士らしき人が何か叫んでいる。一瞬で状況を理解した俺はすっと背後から襲ってきたやけに大きな熊が振り抜く右爪をかわして距離を取る。
「下がりなさい!」
騎士はそう言って俺と熊の間に進んでいく。
「イビルベア中型1体と交戦!ジョゼ!装甲バフよこして!エリン!リジェネレーション準備!」
ジョゼと思わしき男の騎士が命令に応じて叫ぶ
「精霊よ。その力を示せ。エンハンスガード!」
ジョゼの剣を通じて柔らかな光が熊と向き合う女騎士を包む。マジか。これ魔法じゃん。ほんとにゲームみたいな世界だよ。すげー。
なんてびっくりしつつもとにかく様子を伺う。
熊のするどい爪が何度も女騎士を襲うが、騎士も大型の盾を駆使して何とか熊を食い止めている。すごいな・・・よくふっ飛ばされないもんだ。体重軽そうに見えるけど。
「くっ!ちょっと!あんたまだいるの!早く逃げなさい!あ!うぅっ!」
こちらを向いた隙に熊に盾を弾かれた。ちょっとまずいな。
「悪かった。代わる。」
熊の動きを少し見て大まかな力量を把握した俺は女騎士の鎧を掴むと後ろへ引き倒した。
「な!何しているの!死ぬ気なの!下がりなさい!」
「ちょっと待ってて。やってみる。」
女騎士の声を背に、振り向かずに俺は言うと、
熊か・・本物と戦うのは初めてだ。俺の熊とどっちが強いかな?と思いつつ以前散々練習し尽くした形意拳十二形拳「熊形」を構える。
ちなみに形意拳というのは割とわかりやすい一派で、現在の中国でも一定の勢力がある。様々な動物の動きの例えた十二形拳は見た目もちょっと面白いからね。だけど本気でやると結構強いんだこれ。
俺を見る熊が口から唾を垂らしながら怒り狂っている。十二形拳「熊形」は遠距離からの肘打ちが特徴だ。熊のひっかきに対し腕を回し進行方向に振り払う。その隙に熊の心臓目掛けゼロ距離まで一瞬で飛び、その力と肘打ちの動きを連携させ心臓を打撃!
「ゴフッ…」
熊は怯むが流石熊だ。これでは無理か。俺は更に同じ動きを左右対象にすることにより回転力を高めた肘打ちをすべく足に力を込める。するとどうだ、足は地面に吸い付けられたような接地力を感じ、ミリミリと筋肉が絞り込まれ足から背中を通って回転する肘にエネルギーが集約される感覚がする。これはすごいな…。
俺は足から伝わる力を膝、腿、腰、背中、肩と順番に回しながらその力を加速させていく。ものすごい力を感じる。戦車でも吹っ飛びそうだ。
「ドッ!!」
「ズブシャーーーーーー!!!!」
俺の渾身の肘打ちを心臓にくらった熊だが、背中が裂けて血肉が吹き飛んだ。もちろん即死である。
「いやあ、すみません…。」
そう言って俺は振り向くと、騎士3人が腰を抜かしてポカンと口を開けていた…。
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