第3話 僕と俺の身体

僕と神様の対話は続く。


神様、その新しい世界について教えてもらえませんか?


「ヒヒッ、そうよの。まあそう大きくは変わらんよ。ただ儂は科学が嫌いでの。ほら環境問題ってあるじゃろ、カオルは知らんかも知れんが地球は汚れすぎじゃ。本来の神が戻ってきたら人間は滅ぼされるかも知れん。」


えっ、、両親はどうなってしまうのでしょうか…。よその世界救ってる場合じゃない…。


「まあ1000年以上先のことじゃ。人間もそのうち気づくじゃろ…多分。話を戻すぞ、儂の世界はな、電気の代わりに精霊力がある。精霊力はな、いわゆるクリーンエネルギーじゃ。いや、クリーンエネルギーのはずじゃった…。」


そう話す神様はどことなくシュンとしていた。


「精霊力は儂が放った大量の精霊たちから無限に生み出されるエネルギーじゃ。人間や動物も精霊ほどでは無いが精霊力をもっておる。精霊力を集め、火や風に変え、エネルギーとして機械を動かすこともできるのじゃ。」


「だがの、儂にも想定外のことが起きた。儂が見ていない間にな。黒い精霊が生まれおった。その黒い精霊は通常の精霊とは逆の性質を持つ精霊力を生み出した。わかりにくいので魔力と言おうか。魔力に触れた動物は世代を経ていつしか魔物と呼ばれる生き物となり、人間も魔力を放つ魔族と呼ばれる者が徐々に増えていったのだ。」


すごい…ファンタジーだ。


「ヒヒッ、まるでカオルの世界の夢物語よの。だが事実じゃ。そしてこの数百年で魔王と呼ばれるほどの強く魔力を生む魔族や魔物が発生し、一般の精霊や人間との争いが激化しておるのじゃ。そしておそらく人間はこのままでは負けるじゃろう。それほどに魔王は強力じゃ。はっきり言ってしまうと儂は魔王の一人に割と余裕で負けた。神だから死なんがの。」


あの完成された技を持つ馬老師が…わからない。馬老師がどれくらいすごいかというと5mの半径の円の中心に馬老師が居たとして、円に沿って10名の歴戦の兵士がマシンガンを持って取り囲んだとしても全ての弾丸をかわすことができるのが馬老師の功夫(クンフー)だ。


「ヒヒッ。そうよの。お主には負けたが儂の功夫は4000年の修行による高みよ。並の魔族には負けん。儂が魔王に負けたのはの、単純に力負けよ。儂の化勁でも魔王の魔力を受け流すことはできんかった。カオルでもおそらく真っ向勝負では相手にならんじゃろう。」


なるほど。だったら強い身体を神様に作ってもらえばいいんだろうか?


「ヒヒッ、カオルよ。お主の拳風はそんなものじゃったか?」


そうだ。僕の拳風(ファイティングスタイル)はそんなものじゃない。中国拳法は技術と美しさの極みだ。僕はあらゆる古い拳法を見て、それを組み合わせて最適化を続けてきた。





────────やはり、必要なのは「眼」と「神経」だ。





「ヒヒッ。ようやく本来のカオルらしくなってきたの。弟子として誇らしいわい。ふむ・・わかった。新しい身体の全神経系を精霊回線にアップグレードしてやろう。ヒヒッ面白いのう…。眼についても性能強化しつつ脳の映像処理機能を大幅アップグレードと・・。

これで良し。そうじゃの、PCに例えるとISDN回線が光回線になってグラボがファミコンから最新モデルになったくらいじゃな。無論CPUも最新型じゃ!メモリもドカッと積んどる。全神経系が精霊回線化したことで精霊力の稼働効率も大幅アップじゃ!」


神様、パソコンに例えるのはやめて・・・何でそんな詳しいんですか・・・



そうして神様と相談しながら出来上がったのが俺だ。まあ普通の人間なんだけどちょっとしたところがすごい?みたいな。筋肉は無いけど鍛えればいいよね!

あと僕って言うとなめられそうだから今日から俺で行くぜ!


「ヒヒッ、好きにするがいい。では、これで最期じゃ。カオルよ、この数年間儂と付き合ってくれてありがとう。この4000年の中で一番楽しかったんじゃ。儂と覚えた技術を使ってどうかこの愚かな神の失敗を救ってくれ…」


ありがとう神様。ありがとう馬老師。動けなかった俺にとって、本当は動けるだけで十分嬉しいんだよ…。



こうして、俺はこの世界にやって来たわけです。

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