第2話 僕と神様

────────よく来たの。カオル。



気がつくと馬老師が目の前に居た。

実際に会った老師は思っていたよりも大きかった。身長を読み違えた?いや、オーラがすごいんだこれ。

あ、僕の名前は花田カオルと言います。


馬老師、日本語話せるんですか?


僕は思わずどうでもいいことを思う。


「ヒッヒ、儂は日本語は話せん。カオルの脳が勝手に翻訳しているだけよ。何せもう死んどるからな。」


そうだった。僕は死んでいるはず。もしかしてこれは死後の世界?


「ヒヒッそうそう。話が早いな。」


僕の心を読んだように馬老師が話す。馬老師、その小悪党みたいな笑い方止めた方がよくないですか…。


「ヒッ、、む。そうか。」


すみません、余計なことを考えてしまいました。


「まあ説明せねばならんな。まあその…あれだ。異世界転移。それ。」


老師、よく日本のマイナーブームをよくご存知ですね。


「まあの。ヒヒッ、儂はその、わかりやすい言葉で言うと神的存在って言うの?それじゃ。」



神様!


「ヒヒッ、そうそう。でな、結論から言うとカオルをこのまま死なせるわけにはいかんのじゃ。」


馬老師もとい神様が言う。僕は、


あの…その…うれしい?と思うのですが一体なぜ…


「儂はな。元々カオルの世界での神では無いんじゃ。たまたまカオルの世界の神がでかけるからしばらく見てくれと頼まれての。暇なので目についた面白い動きをする中国拳法というものを学んでおったのじゃ。かれこれ4千年くらいかのう…。如何せん凝り性でな儂。ヒヒッ。」


神様そんなことやってたんですか…


「それでな、儂が拳法にかまけているうちに本来儂が管理しておった世界がちっとばかり大変な状況になっての…ヒヒッ。どうしたもんかと考えいるうちに見つけたのが主よ。」


えっと。それは神様が悪いような…


「ぐ…。そうよ。儂が悪いのよ。つまりの、ちょっと4千年ばかりほっておいたんじゃがの、魔王が生まれておっての、そのな…儂、負けてしまっての…。」


!神様負けちゃったんですか!


「ヒヒッ、そうよ。儂別に戦闘好きじゃないしの。良かれと思って世界に精霊を放ち、魔力に満ちた世界にしてどんなことになるかと思っておったのじゃがの、忘れてたんよ。ヒヒッ。」


…。


「まあそう呆れるでないカオルよ。儂はな、お主にこそこの世界を救って欲しいのじゃ。カオルの世界で最強のお主によ。」


いや…僕動けない病人ですよ。


「ヒヒッ。確かにそうじゃ。だがの、お主の夢も空想も、実際に戦ったのは儂よ。だからわかるんじゃ。主の意思とイメージ力、才能は誰よりも高い。身体が動いたらカオルは無敵よ。」


僕の今の気持ちを率直に言うと、、嬉しかった。来る日も来る日もずっとイメージの中で技を極めることが虚しくなったことだって実際はいっぱいあった。

でも僕にはそれしか無かった。だって身体動かなかったし…


そして気づく。僕今身体が無い。


「ヒヒッ。今は魂だけじゃからの。これから新たな世界に主を転移させる。身体を作らないといかんの。主の力でも魔王は倒せんじゃろう。だが主は努力ができる。新たな世界で何を見て何をするべきなのかをカオル自身で考えるのじゃ。」


僕がやりたいこと…。



────────中国拳法────────



だって僕にはそれしか無いんだ。


「ヒヒッ。そういうと思ったわ。だがの、自分の目と自分の足で世界を学ぶがいい。もっと大事なものもできるかも知れんしの。そろそろ時間じゃ、そうじゃの、ちぃとばかりチートって奴でも授けるかの…ヒヒッ。」



老師のダジャレに反応するか迷いつつ、僕は念願の動く身体とチートについてイメージしてみた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る