第24話〜チョコの涙
「わふっ!」
「わ、チョコ!」
部屋を出た所で廊下の奥から毛玉が弾丸のように転がってきて、その勢いのまま跳ねてユウキの胸に飛び込んだ。
受け止めようとしたユウキだったが、思ったように体が動かないばかりか踏ん張ることもできずにたたらを踏み、バーシャンが支えてくれなければ尻餅をつくところだった。
バーシャンに手を貸してもらえなければベットから上体を起こすこともできず、オクタの【不可視の糸】で補助してもらえなければ立って歩くこともままならなかった。
一体どれだけ体が鈍るほど眠っていたのかと思うと空恐ろしい。
「ユウキ、大丈夫?」
「あ、ありがとう…」
腕にたわわな果実が当たっている。
やはり本人は無自覚のようだった。
なぜか脳内に昔友人から聞いた【駄目男製造機】なる無自覚の女性のことを思い出した。
バーシャンは天然の気配がする。
それはさておきチョコ。
ユウキは可愛いふわふわの相棒のことを撫でてやろうとしたが…
「わふっ、わふぅ!」
「チョコ……って泣いてる⁉︎」
チョコはポロポロと毛に埋もれたつぶらな瞳から大粒な涙を零して泣いていた。
「い、犬って泣いたっけ?それよりどうしたのチョコ」
チョコはユウキのシャツに必死にしがみつき、小さな口で噛んで絶対に放すものかと泣いていた。
その姿はまるで親元から引き離されそうな子供のようだった。
「その子、ユウキがここに運ばれて来た時からずっと飲まず食わずで離れなくて、仕方なく魔法で眠らせて別室で世話をしてたのよ。暇さえあればずっとあなたの側から離れようとしないし、そのままだとこの子まで倒れちゃうから別の子が定期的に外に連れて行ってたのよ」
「チョコ……」
その後数分ほどチョコは力尽きるまで泣き続け、そしてユウキにしがみついたまま眠ってしまった。
この小さな子にここまで心配をかけてしまったのだと思うとユウキの胸は強く締め付けられた。
この小さな毛玉のような相棒がとにかく愛おしい。
「オクタさん、俺はどれくらい眠ってたんですか?それにこの布はいったい……」
「それを含めて貴方には色々と話さなければいけないことがあります。オウル様の元へ参りましょう」
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