第23話〜バーシャン

彼女が部屋を出ていってからほんの数分で扉がノックされた。


「目覚めましたね。気分はどうですか?」


「オクタさん」


入って来たのはオクタと、そしてオクタとよく似た仮面を付けた先ほどの少女。


こうして並ぶと多少の差異が見られるが、仮面といい雰囲気といい、よく似ている。


もっともオクタは知的さと母性、もう一人の彼女は母性というよりお嬢様気質な気もするが。


それと並んでいると分かる明確な違いとして、オクタの方が背が高い。


もっとも胸の方は


「何やら邪な気配を感じますね。寝起きで呆けているのですか?」


しまった、目の動きでバレたか⁉︎


ユウキの背筋に嫌な汗が噴き出す。


オクタの胸も人並みにはある。


隣の彼女が目立っていいものを持っているだけだ。


そしてユウキも男である以上、最低限のその手の感情だって持ち合わせているわけで。


「?」


どうやら彼女の方は気付いていないらしい。


「まぁいいでしょう。起きたばかりで状況がよく分からず混乱するかもしれませんが、まずは落ち着いて現状を理解していきましょう。まずはバーシャン、自己紹介です」


「はい、お姉様」


彼女、バーシャンがユウキに軽く一礼する。


「私はこの【時守の里】で巫女をしているバーシャンよ。あなたの世話係を任せられているわ。ここでの生活で分からないことがあれば私に聞いて」


「あ、えっと、バーシャンさん…」


「バーシャンでいいわよ。あなたのことはお姉様から聞いてるわ、ユウキ。オウル様の弟子なら私にとって血の繋がらない弟みたいなものね。お姉様と呼んでもいいのよ?」


「お、お姉様?」


バーシャンはどこか嬉しそうにお姉様と言った。


ユウキは彼女が自分よりも年上だったのかと首を傾げた。


仮面のせいで顔がわからないので声で判断するしかなかった。


なんとなく年下な気がしていた。


「バーシャン、ユウキは貴女と同い年よ」


「「え⁉︎」」


つまり16歳である。


どうやら年上というわけではなかったようだ。


「そ、そうなの、お姉様?てっきりまだ成人もしてないのかと…」


この辺りでは男女共に13歳で成人として扱われるんだったか。


よく日本人は外国などにいくと実年齢より若く見られることが多いと聞くが、確かにこの世界でユウキが出会った人々の顔は比較的彫りが深く目鼻立ちがはっきりとしていた。


彼のように日本人特有の彫りの浅い目鼻立ちや童顔は実際、幼く見えてしまうのだろう。


ちなみに身長や体格も日本人の平均よりも大きいため、恐らくユウキとバーシャンが並べばほぼ同じ程度だろう。


つまり彼はバーシャンからよほど年下に見られていたらしい。


「嘘。じゃあ同い年の殿方にあんなことを…?恥ずかしい……」


そう言って仮面越しに顔を両手で覆うバーシャン。


(い、いったい何をしたんだ⁉︎)


ユウキはユウキで悶々としたものが胸の内に湧いてくるのだった。

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