第19話〜暗転

頭が弾けそうなほどの痛み。


内側から脳が肥大し、頭蓋を圧迫する。


圧倒的な情報量が視覚を通して脳を焼く。


「眼を閉じなさい!」


無理だ。


痛みに溢れる涙も、視界を塞ごうとする瞼も、その眼が、【瞳】が許さない。


世界が赤く染まる。


堪えきれずに目元を覆った両手が真っ赤に彩られている。


【瞳】に耐えられずに目の毛細血管が切れたのか。


情報を処理出来ていなかった脳が、加わった痛みについに限界を迎えようとしていた。


「ーーーーーーーーー、ーーーーーーっ‼︎‼︎‼︎?」


喉が張り裂けそうなほど叫んでいるはずなのに、何度も叫び喉を、咥内を傷つけているはずなのに。


もう痛みを感じない。


ただ視界だけが消えてなくならない。


「っ!息をするのを止めてはいけません!体は私が押さえますから、とにかく息をして!」


「はっはっはー!すごいすごい!元気だねぇ。まだ暴れられるなんて、すごい資質だよ!」


叫び声は聞こえないのに、そんな声だけは不思議と脳に入ってきた。


いや、もう喉は叫び過ぎて枯れてしまったのか。


「貴女も手を貸してください!このままではこの子が……!」


「えー。ボクは契約に従って対価をいただき、願いを叶えただけだよ?その結果に手を出すのは理に反するよ」


「この子がこれ以上自分自身を傷付けないよう抑え込むくらいはできるでしょう!」


「やれやれだねぇ」


視界が固定される。


意識から離れて暴れていた体が不可視の何かと怖気立つ何かに押さえつけられた。


視界が空だけを視る。


けど、駄目だ。


少し前までは青いだけだった空も、今の視界には目に毒なほど”視えすぎる”。


空が、空気が、それ以外の何かが。


情報の波がユウキの自我まで侵食する勢いで流れ込み。


不意に顔に黒い布のようなものが巻き付けられ、世界と遮断された。


後にこの布がオウルが常に身に付けていた目隠しだったと知る。


一瞬で無音の闇の中に放り出されたような錯覚を覚え、そしてユウキは意識を手放した。

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