第16話〜人ではないナニカ

森に入ってすぐだった。


何かが爆発したような音と衝撃が届いた。


続いて間を置かずに強い地鳴りと振動が足元を駆け抜けていく。


「なんだ!?」


「わふっ⁉︎……くぅ〜ん」


ユウキはとっさに地面に伏せ、驚いたチョコは音と衝撃に驚き、そして咥えていた干し肉を落とした。


モコモコの毛玉から涙に濡れた瞳が覗く。


そしてユウキの前にいたオクタはいち早く駆け出していた。


その進む先は爆音の発信源。


オウルのいる方向だった。


「チョコ、ちょっと揺れるよ!」


「くぅ〜ん……」


ユウキもオクタを追って駆け出す。


森の木々が飛ぶように後ろに消えていく。


過酷な環境で移動と生活を続けたことで、身体能力は以前とは比べ物にならないほどに上がっていた。


今なら陸上競技の大会で優勝だって狙えそうだ。


しかしオクタの姿はとっくに見失ってしまった。


やはり根本的な身体能力が違う。


何が起こっているのかは分からないが、いつも冷静なオクタが一言も言葉を発することなく走り出した時点でまともではない。


姿の見えないオクタの後を追って、比較的人の手の入った森をかけていった。




数分後。


ユウキは足を止めて息を整えていた。


息切れで立ち止まったのではない。


目の前の光景に思わず足を止めてしまったのだ。


オウルのいる森の奥に向かっていたはずが、そこに森はなかった。


森の中を走っていたはずだったが、不意に目の前に森が途切れたのだ。


森を抜けたのではない。


ただいくつものクレーターと、抉れて地肌の覗く大地が広がっていた。


ここに来るまでも何度も音と衝撃は来ていたが、まさかこんな隕石がいくつも落下したような有様になっているとは思わなかった。


「何があったんだ?」


「わふん?」


1分ほど前から音は止んでいる。


辺りは生き物の鳴き声すら聞こえない。


森そのものが息を潜めていた。


「何をしているのですか、◼️◼️◼️ともあろう貴女が!」


オクタの声が聞こえた。


少し離れた位置に人影がある。


こちらに背を向けているのはオクタだ。


すぐ側にオウルの姿もあった。


そしてやや距離を取った位置にもう一つの人影が。


ユウキは歩いて近づいていく。


「はっはー。オクタちゃんは相変わらずだねぇ。彼のこととなるといつも元気だ」


もう一人が女性であることを知る。


そして同時にユウキの背中に直接氷柱が差し込まれたような悪寒が走った。


本能で理解した。


アレは人の形はしているが、人ではない。


彼女は人ではないナニカだ。

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