第12話〜いざ、開拓村へ

泉を出発して3日目の早朝。


オクタから告げられた一言にユウキは歓声を上げた。


「今日の夕方には村に着きますよ」


「ほんとですか⁉︎」


異世界に来て半年、初の村である。


正直これまでの道中が人外魔境ばかりで、自分と2人以外には人類は存在しないのではないかという疑惑すら浮かんでいたのだ。


もっともこの2人も人類と言えるかは不明である。


何度か空を飛んでいるプテラノドンみたいな生き物(後にワイバーンと判明)を投げナイフや《不可視の糸》で軽々と仕留めているのを見たことがある。


そんなことを平然とやってのける人物が本当に人類かの確信が持てなかった。


もしかしたらファンタジーの住人で、人以外の種族である可能性もあるとユウキは考えている。


長い時を生きたエルフや長命種族であれば有りえないほどの力を有しているのも納得できる。


ちなみにワイバーンの皮膜部分はユウキのローブに使われている。


「落ち着きがないですよ。数年前までは小さな開拓村だった場所ではありますが、そこでいくつか買い出しをする必要があります。着いたら離れた位置で野営の準備をしてから2人で行きますよ」


「村に泊まらないんですか?」


「あの開拓村には宿泊できる建物がありませんから。せいぜい小さな酒場がある程度です。立ち寄るのも目的地までの繋ぎですし」


「そうなんですか」


「それに開拓村ということは……。いえ、何でもありません。とにかく着いたら手早く終わらせてしまいましょう」


「?はい」


オクタの物言いにやや違和感を感じたが、それでも人里に行ける喜びはそんな違和感などすぐに忘れさせてしまった。




「ではこのメモにあるものを買い揃えて来て下さい。あまり吹っかけられるようであれば、5番目以降のものは買わなくてもいいです。相場は覚えていますか?」


「はい、大まかには」


「小さな村ではありますがスリや置き引きに注意して、人気のない場所には行かないように。トラブルに巻き込まれたら警備を呼びなさい。小さな村とはいえ、自警団くらいはありますから」


「分かりました」


「知らない人に簡単について行ってはいけませんよ。相手が子どもであっても油断しないように。財布はきちんと二つに分けて持ってますか?」


「だ、大丈夫ですって!」


訓練の時以外のオクタはまるで心配性な母親のようだ。


「初めてのことですし、やはり私も付いて……」


「大丈夫ですってば!」


訓練時は鬼教官も真っ青なくせに、こういう時は本当に母親のように心配してくる。


ユウキは一応は思春期男子なので対応に困ってしまう。

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