第9話〜日々成長
ユウキの朝は日の出から始まる。
空が明るくなる頃には目を覚まし、手早く身支度をして、30分ほど走る。
森の中や平地、山道、様々な環境の中で出来るだけ速く、そして獣などの気配に気を配りながら、とにかく走る。
走ることは生きる可能性に直結する、というのは最近ユウキの中にある生きるための持論の一つだ。
走れなくなったものから死んでいく。
他のどこを怪我しようがやりようはあるが、脚が動かなければ死ぬ確率はぐんと上がる。
特にユウキのようなただの人間は、機動力(逃げ足とも言う)がなければ自然の中で生きていけない。
戻ってきたらオクタによる訓練という名の一方的な狩を生き延び、朝食を食べたら移動を開始する。
そして辺りを警戒しながらオクタによる講義が続く。
日が沈む前には狩りをして、食料と水の確保をし、野営の準備をする。
夜間は交代で見張りをし、場合によっては火を囲んで一晩中起きながら野宿もした。
日中は常に移動し続けることもあれば数日間同じところで探索したり、調査することもある。
悪天候の中でも連日移動したり、猛獣が虎視眈々と息を潜める森を昼夜寝ずに歩き続けたり、水も食料もろくにないままひたすら山間部を進み続けたこともある。
最初の1週間は訓練どころではなかったが、人間何事もやって出来ないことも慣れないこともなく、最近ではようやく慣れてきたような気もしないでもない。
チョコと遊ぶだけの時間ができる程度には慣れた。
チョコも毛玉からちょこんと生えた短い4本の足で付いてきてる。
腕や足が切断される痛みや大量出血、打撲や骨折、拷問じみた耐性訓練にも最近ではようやく慣れつつある。
出来ることは結構増えたと思う。
始めは狩りで獲物にとどめを刺すこともできなかったが、今では罠を工夫して捕らえて毛皮から内臓まで全てを大まかに捌くくらいはできるようになった。
食べられる植物やキノコ、果物、効能のある薬草などは実際に採集して、加工することで覚えているところだ。
武器などを自作するのは環境と道具がなくて実践出来ていないが、いずれ教えてもらえるらしい。
最低限の技能は身に付けたらしいが、まだまだ覚えることはいくらでもある。
オクタ曰く半人前どころかまだまだヒヨッコもいいところらしく、二人がいなければ5日と保たず死ぬだろう。
時折わざと毒のある植物などを食べて身体に馴染ませたり、他にも色々とやってはいるが、この世界で自立して生きていけるようになるにはまだまだ時間がかかりそうだ。
ここまでの話の流れからも察せられるだろう。
今更ながらユウキが今いるこの世界は、地球とは別の惑星、もしくは異世界だ。
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