第13話 スマホ、コンシューマ
屋上と3階の間の階段に座っている。ここは静かで。外のにぎやかさはどこか遠い世界のようだ。屋上に行く入り口の前には机や椅子が山積みにされている。足のが3本しかない椅子や半分に割れた机。独特のかび臭さが漂っていた。
僕は3dsを片手に持ちながらアナログパッドを時計回りに回している。それと連動してドット絵のキャラが仲間と輪になって動いている。髪を立てた勇者に、筋肉質な武道家、とんがりが二つある帽子をかぶった僧侶、青い服をきて金髪の魔法使い。彼らは今どういう気持ちなのだろう。どこへ行くのでもなくただ同じところをくるくる回っているだけ。内心はうんざりしているのではないだろうか。早く世界を救いたいのではないだろうか。だが、僕はアナログパッドをまわしているだけだ。
優はスマホでカタカタと赤色の丸いものを動かし、ポンポンポンポンコンボを決めている。スマホゲームをやらない僕にはどう考えて動かしてるのか見当がつかない。だが、メロディアスで軽快な戦闘曲は知っているような気がした。
「お前スマホ持ってねえの?」
優はスマホの画面を見ながら話しかけてきた。
「持っているよ」
僕も優のほうを見ずに答える。Aボタンを連打して全員にたたかうを選択する。
「じゃあなんでゲーム機なんか持ってきてるの?」
「スマホゲーム苦手なんだよ。なんか作業感強いし。周回とか何が面白いかわからん」
優が不思議そうな顔をして、ゲーム機を指さす。
「今、お前がやっているレベル上げも大して変わらないじゃん」
「違う。これは次のボスに勝つためにやっていることであって、スマホゲームみたいにただただ周回しているのとはわけが違う」
僕はいつもよりも早口になりながら理由を説明する。
「スマホゲームだってボスに勝つためにやっている」
「確かにそうだけど、それを延々と繰り返さなくちゃいけないだろ。それが嫌いなんだ」
「じゃあ最初からそう言ったらいいじゃん。要は終わりがないから嫌いってことでしょ」
優はさもわかったかのような口ぶりで話してくる。それに苛立ちを感じて反論してやろうかと思ったがこれ以上ムキになったところでいったいどんな意味があるのだろうか。結局僕は「まあ、そういうことだ」と言ってこの会話を終わらせた。
落ちこぼれ19な僕と義妹 red-panda @red-panda
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