第7話 心の座礁

  荒廃した世界を歩いていく。木は一本もなく、周りは岩山に挟まれている。岩山短い草やコケなどが張り付いて緑色になった部分とごつごつとして濃いグレー色を下部分がまじりあっている。岩山の間には溝のように一本の道が僕の目の前に浮かび上がる。たくさんの岩があり、中には腰くらいまでの大きさがある岩もある。雨によって削られて凸凹とした形になっている。それは山がかけて生まれてきたものなのか、それとも元々そこにあったのかはわからない。ただ、その岩は僕がくるよりもずっと前からそこにあったし、これからもそこにあり続けるのだろう。そんな岩の横を通り抜け上へ上へと登っていく。登っていくにつれ岩も増え、急斜面になり、道も狭まってくる。自然の牙がぎらりと警告しているようだ。それを無視して手なども器用に使いながら登っていく。途中で転けそうになりながらもただ黙々と歩く。

 一人。

 僕の周りには誰もいないし、何もない。ただ、うっすらとしたつながりが手や足に括り付けられている。その糸には何も力がかかっていない。ただそこにあるだけだ。だが、それ自体が僕に影響して動きにくくし不快感を生むこともあるが、逆にその糸を使って楽に動けることだってある。はたから見ればひとり遊びをしているように見えるかもしれない。

 力のない糸。ただそこにあるだけ。だがその糸は感知しないところで電気を通して僕を操っているのかもしれない。別のものが知らず知らずのうちに割り込んできてそいつの都合のいい方向に誘導されているのかもしれない。その糸はそこにあるのにも関わらず実態がなく、切ろうと思ってもふにゃふにゃと曲がりがはさみを上手に避けていく。

 僕は一歩一歩丁寧に、転ばないよう障害物やぬかるんだ場所を避けながら歩いていく。徐々に傾斜は緩くなっていき、岩が減り、緑色が多くを占めるようになってきた。そして、緩やかな傾斜がほぼ水平になったとき、目の前の景色が広がった。僕が登ってきた場所とは違い一面緑色の坂で両側の視界を遮る山はなかった。その奥には海が見えた。海は太陽の光を反射する。波に合わせて反射を変え、きらきらと輝いているように見せる。U字型に切り取られた大地に沿って、大きな都市が見える。港に隣接した都市は無機質な建物が乱雑に密集していて窮屈そうだ。港はタンカーなどが複数台止められるように陸から海に細い棒が伸びていくようにに足場を作っている。高いビルは空を侵食し、足場は海を侵食してく。まるでがん細胞のように根を張りながら荒廃した地球に寄生しているようだ。

 あそこが僕の目的地だ。

 都市に向かうため、坂を下りていく。都市は近づくにつれてどんどんと大きくなっていき、やがては全貌も見えない巨大な一塊の物体となる。都市の外にあるゲートを抜け、巨大な建物に入る。ここはまだ都市内部ではない。かといって完全に外というわけでもない。その中間である。

 僕はそこで頼まれていた仕事をこなし報酬をもらう。そして誰にも会わず、用意された休憩室に入る。そこは白色の無機質な場所で、ベッド、テーブル、トイレ、シャワーなど生活に必要なものはそろっていた。テーブルの上にはエナジードリンクのモンスターが置いてある。手に取って、一気に飲み干し、缶を蹴り上げる。カランカランと軽快な音が室内に響く。シャワーやトイレ、一通りの身支度を済ませた後、イメージチェンジのため黒いフレームに赤のラインが入ったサングラスをかけ、外に出る。



 








一息つくと、僕はps4とテレビの電源を消した。

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