第22話 大和は、仲間の忠義のために、ファールボールを打ち続けたい
大和は自分のギフトを振り返った後、土御門とのバッター対決に臨んだ。
土御門のギフトの使い方、私たちの分析などの事前準備から戦いへの土御門の覚悟は私たちより1段階上だ。そして、私は勝負について考え直した。
あの時、神聖のグラウンドで物を食べるなんて許せないと思ったが、今はそうとは思えない。土御門、勝ちたいと思っているチームメイトを見ていると、ルール上で勝利を目指していくことがその競技への忠義ではないかと思う。
私の忠義は世間の常識ではなく、チームと競技にあると思った。
だから、世間で嫌われているファールで球数を稼ぐ行為を遠慮なく行い、甘い球を打たせてもらう。
それをやろうとしてできなかった風祭、巻島の分も迫っており、仲間への忠義として土御門に勝ちたい。
大和はバットを構えて、土御門のボールを待った。
ふっとした瞬間、大和は、本人すらわからないナックルボールを守備がうまくないゴーレムはどうやって取っているのだろうと考えた。
キャッチャーである大和は、自分ならどうやってナックルボールを取るかを考えることが、その謎の答えにつながると予想した。
私なら、あらかじめキャッチャーミートに投げるコースを定めてから取る。
しかし、ゴーレムたちの知能ではおそらくそれは難しいと思い、ゴーレムの観察を行った。
ゴーレムたちは取る構えを取りつつ、不規則にキャッチャーミートを動かしていた。それだとスローボールすら取れないと大和は思い、観察を続けていた。
気付けば、土御門はボールを投げていた。150kⅿのストレートがアウトコースの低めに襲い掛かってきた。
ゴーレムはたまたまアウトコースの低めに構えており、ミートに入るようにしている土御門が投げている。投げたいコースにキャッチャーミートがついた瞬間、土御門を投げているのかと大和は思った。
用心のため、もう一球みたいと思った。
やはり、土御門の投げたボールは、ランダムに動かしているゴーレムのキャッチャーミート辺りに投げている。インコースの低めの150kⅿの球でストライクを取られてしまった。
結果的に2ストライクを取られてしまったが、コースの絞り込みができるという対価に比べれば安いものだ。
私の勝負勘によれば、次はナックルできそうだ。
ナックルに関しては、コースさえわかれば打てる。
3球目の球速はやはり110kⅿぐらいだ。
ゴーレムのキャッチャーミートは、アウトコースの高めであり、大和のバットはそこを打ち取った。ボールにぶつかった瞬間、バッドの金属音がグラウンド周囲に鳴り響いた。大和の狙い通りにボールは、フォールラインの外側をまるで新幹線が走ったような速度で転がっていた。
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