第21話 大和の憂鬱~バッタボックスでの走馬灯~
大和は子供のようにはしゃいでいる風祭を見て、少し武者ぶるいしている。
ピリピリとした勝負は大和にとって久々である。
ギフトをもってしまった大和にとって、ここは、武士道を磨くところとして最終地点であった。だが、オーナーのゆるさやともに戦う仲間とさえいれたらいいと思っており、少しギフティーボールへの勝負が鈍くなってことには事実だ。
あいつに従いたくないからプレイしていた所が、ギフトを使い込んでいる強者と闘いたいという気持ちに変わっていた。
こんな強者と闘わせてくれる武士道という嫌いなギフトに今だけ感謝している。
大和は、このギフトについて考えつつ、自分の過去を走馬灯のように思い出していた。
大和家は和を重んじた一家で、男は剣道、女は茶道を継がせる。
大和家は女しか生まれていなく、足・腰が強く剣道が強い男を渇望した。
その願いは体タイプのギフト持ちの女の娘をつくってしまったのだ。
体タイプのギフトの特徴として、遺伝や子供への願いが引き継がれることが多いことがある。
その願いは叶わなく、運命は残酷でゆがんだものである。
ギフトの影響であるかはわからないが、撫子は剣道にあこがれ、女性の道からそれて武士道の世界に入り込んでしまった。
一族から冷たい目でみられているが、それより武士道への憧れが強かった。
その当時から現在も武士道を目指すのに性別なんて関係ないと思った。
武士道を目指すために剣道を始め、剣道を通じて、武士道を模索していった。
剣道で全国大会を優勝するところまでは極め、武士道もこのまま極めていきたいと本気で思った。
この時、自分はギフトを持っていないと思い、剣道と長年付き合うものだと考えた。武士道というギフトは、乳児からもっていたがわずかな力しかなかったため、自分にはギフトを持っていないと思っていた時期は合った。しかし思春期になり、武士道というギフトも成長し、かなりの力を持ってしまった。
ギフト持ちの参加をみとめていない競技は多くあり、その競技の1つに剣道がある。武士道というギフトの成長により優勝の称号も、大会参加の資格もうばわれてしまった。ショックを受けたが、落ち込んでいる間があれば武士道を目指したかった。
武士道を別の競技で模索していく予定で、ギフトを用いる競技で模索せざるを得らなかった。競技は正直どれでもよかったため、ギフトを用いる競技で最もメジャーなギフティーボールにした。
しかし、武士道というギフトはギフティーボールでも足を引っ張った。
体幹・下肢全体の筋肉が金属になり、筋効率もかなり向上される。制約として、上肢の筋力が下肢の重みについていかず、ボールはフライを上げることはできない。そのため、低く、鋭い打球を打つことしかできない。
強い男なら勝負勘持ってほしいという大和家の願いと全国大会まで行った経験により作られたサブギフトである勝負勘があっても、打球が上がらないデメリットは消すことはできなかった。
バッター対決時のみギフトを使わないようにしていたが、私のギフトは試合などの勝負事になると強制発動してしまう。
だから私は、少しでも打球が上がるように今でも毎日素振り2000回・ベンチプレス・ンベルなどの上肢の筋トレをし、通常女性の2倍の筋力を獲得している。
それでも打球は上がらない。
だからホームランバッターをあきらめており、ゴロを主に扱う選手になった。
私のゴロは、フォアボールラインならどこにでも打ち込める打球コントロール、コンクリートにひびを入れる威力、どんな守備も対応できないくらいの早い打球まで成長させたつもりだ。
打球が上がらないからこうしてゴロを極めるのも楽しいし、この武士道というギフトに向き合うことが試練だと思っている。
それでも、剣道を捨てたショックは忘れきれないし、ホームランのへの憧れは捨てきれない。
いろいろ人生を狂わされたギフトであり、コンプレックスである。
全国大会時でも味わったことない本当の勝負師である土御門と、勝負させてくれるこのギフトには今だけ感謝している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます