第20話 風祭は、自分の課題を見つけた。


 バッターは1周して風祭に再度戻った。


 土の塊で風祭のプロペラは飾りになってしまい、巻島と同様に風祭も球数を稼ぐことを考えていた。


 土御門の150kⅿの球は、風祭の球数を稼がせてくれることの思惑に対して厳しく、2球で2ストライクを取られてしまった。

 2ストライクと追い込まれているが、風祭は冷静に何をするべきか考え、ナックルボールは完全に捨てて、どんな速度のストレートが来ても対応するということがするべきことだと思った。


 土御門は3球目のボールを投げ、このボールは150kⅿの剛速球だ。


 風祭は、落ち着いてボールかどうかを見て、おそらくストライクに入り、アウトコースの低めになるだろうと思った。


 コースが分かっても、バットが追い付けなく、ヒットにできそうにない。でも少しでもあがきたいという気持ちがあり、そこでバットにかすらせた。こんなぼてぼての球は、ピッチャーゴロになって終わりであろう。


          土御門に会う前の私なら、ここで諦めるだろう。



 でも、私たちへの分析や下準備などを行っている土御門の勝利への執念に勝ちたいという気持ちが強くなっていた。

 純粋に勝ちたいという気持ちが強くなりすぎて、あいつの指示のもとギフティーボールはしたくない最初の感情は消えていた。

 いつもの私ならプロペラで吹っ飛んで簡単に塁を踏むが、土の塊のせいで恐怖心が強くなった。

 速さしかとりえないのない風祭は、恐怖よりあのゴロでヒットにならないことに対しての悔しさが勝る。

 普通に飛んだらゴロになるため、瞬時にプロペラを使った。

 私は土御門の腕を一瞬見て、やはりギフトをうまく使い込んでいることに対して尊敬した半面、体タイプで自分のギフトに向かい合えなかった自分が情けなくなった。


 風祭はこの飛んでいる一瞬しか、本気で自分のプロペラに向き合えないと思い、自分のギフトをすべて使おうと思った。

 

 すると、今まで使ってこなかった足趾のプロペラが動いた。

 足趾のプロペラが回転し、3㎜ぐらい浮いた気がした。しかし、風は靴底に当たり、うまく飛べなくなった。



   浮かべなくなった風祭は土の塊にぶつかり、転んでしまった。



 受け身を取りながら、倒れている風祭は笑っていた。

「そうか、これが私の課題か。面白いぞ。」

「体タイプだから、ギフトを応用できないなんて大違いだ。私にも面白い風が吹き始めているな。」

「土御門。これがおまえの勝利への執念に駆り立てる正体か。全力で勝利を目指すってたのしいな。」

自分の課題を見つけたことと真剣勝負の楽しさを目の当たりにした風祭は、高揚感が高まり、子どもがはしゃぐように笑いながら言っている。


「ねぇ~。こんな風祭もいいよね。どこか冷たい感じがあったけど、今の風祭は熱いよ。」

 ベンチで、巻島は目をキラキラさせながら言った。


「頭ぶつけておかしくなっただけじゃねぇ~の。」

 紅は何も考えずに答えた。


「その返しは残酷だよ。」

 呆れながら巻島も言った。

 

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