第15話 ナックルボールの作戦会議②


私たちの議論はナックルボールが中心に行った。


「土御門のナックルボールは握り方がナックル特有の物でもないし、フォームも変化が見られて入れていない。おそらく、ギフトによるものだ。」

 大和は、土御門のナックルボールについて考察を述べており、私全員は、それに納得している。


「すぐに思いつくのは2つ目のギフトだけど。その可能性は低いんだよね。かなりレアなケースだし、2つのギフト持ち特有の身体的障害がみられていないしね。」

巻島は考えこみながら言った。


「あの変化球は、ゴーレムを作るというギフトで作っているのか。ラーメン屋で、あいつのギフトは応用難しいって言っていた私たちが、恥ずかしくなってきたな。」

 風祭がぼっそりと言った。


「土御門のギフトは土のゴーレムをつくる操タイプだな。相性がいいのは、創タイプ、変タイプだな。創タイプはゴーレムの造形をつくるところだな。変タイプは、神経回路、筋組織を持っている土に変化させることだと思う。」

 大和は土御門のギフトについて考えを述べた。


「なるほどね。普通の土から神経回路の土に変更なら、ゴーレムが学習していることと、ゴーレムの神経と筋組織をもっているから腕だけでも剛腕のパワーの説明にはなっている。」

巻島は納得しながら言った。


「それだと……ナックルボールの説明には、ならなくないか」

と紅は突っ込んできた。


風祭の腕から機械音が聞こえ始め、風が発生した。


土ぼこりが吹き荒れてしまい、目に砂が入ってくる。


「おい、風祭。目に砂入ったじゃねぇ~か。ふざけんな。まるで目に小さい生き物が入ってるみたいで、うっとしいな。」

紅は風祭の意味の分からない行動に対して怒りが爆発した。



その怒りの発言で、巻島は何か引っかかっている。




「そうだね。根詰めていたから空気の入れ替えをさせてもらったよ。」

風祭は、冗談交じりに笑いながら答えた。


「外にいるのに空気を入れ替えてもしょうがねぇ~よ。」

と紅はあきれていた。


「あっ。そうか。なるほどね。」

巻島は何かを閃いたみたいで、先ほど引っかかっていた物が取れたみたいだ。


「2人のおかげで、ナックルボールの謎が分かったよ。」

巻島は笑顔で答えた。


「私たちは、ゴーレムは大きなものしか想像していなかったことが間違いなんだよ。」

巻島は説明しはじめた。


「小さいゴーレムが作れたからって、何も変われないぞ。小さいゴーレムって言ってもボールくらいだろ。ボールとゴーレムを変えたって言いたいのか。」

紅は、馬鹿らしいと思い反論した。


「それも大きすぎます。私が言っているのは、目には見えないくらいの大きさのゴーレムのことを言っているんですよ。」

巻島は紅に諭すように説明した。


「そういうことか。なるほど。」

大和も理解して、ひらめいたみたいだ。


「ボール上には、たくさんの目に見えないゴーレムが乗っており、そいつらが暴れて、ボールの軌道を変えていたのか。目に小さくても、土御門のゴーレムのパワーとゴーレムがたくさんいれば可能か。」

と大和は続けて説明した。


「あんな複雑な軌道になっているのはたくさんのゴーレムが乗っていて、そいつらが不規則に動くからか。何体もゴーレム出せるってチートかよ。制限とかないのか。」

と紅は少し焦っている。


「いや。制限はあると思う。」

と風祭は自信をもって答えた。


「たくさんのゴーレムを出せる時点で制限とかないだろ」

と紅は言い返した。


「紅よ。なぜ、守備は5体しか出していないんだ?たくさんのゴーレムはだせるのに。」

と風祭は目を細めながら言った。


「たしかにそうだ。」

と紅は納得してしまった。


「私の予想だ。制限されているのは、ゴーレムの数ではなく、時間の方だ。」

「そう思ったきっかけは、あいつが勝負を臨んできたときに紅の体力を理由に3イニングにしたことだ。」

「土御門の風は負けず嫌いで、そんなやつが相手の調子が悪いからって短縮を望むのだろうか。いや、自分のギフトの耐久性が低いのを別の理由で隠したかったのだろう。」

と風祭は淡々と説明した。



「私たちは持久戦に持ち込むことで勝機があるんだね。頑張ろう。あのくま野郎は、そこまで勝ちたいかって言いたいね。私たちの弱みを自分の弱点隠しに使うなんて許さないね。」

と巻島はすこしイラっとしていった。



大和にとって、少し疑問に思うことがあった。

短くするために3イニングにしているのは納得している。

でも、より短い1イニングにしないのだろうか。1イニングだったら、勝っていたのに。

むしろ、最初の1本でしか点を取るつもりがなければなおさらだ。

これが、土御門が勝敗より望んでいる物の正体へのヒントになりえるのだろう。


「ねえ~。大和なんで考えているの?」

と巻島が心配そうに言った。


「なんでもないよ。」

と大和は、そのことに関しては確信がなかったため、ごまかした。


「それにしても土御門は面白いな。ギフトの使い方でパワー強化とか、ナックルボールを作っているから。相当な努力をしていたんだろうね。これが勝利への執念によるものか。」

と風祭は土御門に感心した。


「そうだな。ゴーレムを作るってだけでここまでやれるのはすごいな。私たちが、ギフトについて考えされたのは初めてだ。次からはこれをして相手チームを攻略しないとな。」

と大和は、新たな成長にうれしさを感じて、少しにこやかになっている。


話し合いは終わり、私たちは守備に戻った。


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