第13話 紅は劣等感に押しつぶされそうになる。
3番バッターである紅は3球目のナックルボールに驚かされて、ナックルに関しては捨てるようと考えている。
バッターボックスに立ち、バットを構えた。
1球目は、早速ナックルボールだ。コースはど真ん中に入っていたので、見逃すことはできなかった。
振り逃げあるいは、ゴーレムの守備の薄さでヒットを狙うことを考え、バットを全力で振った。しかし、紅が空振った後、ゴーレムはボールを何事もなく取った。
紅は今まで土御門に勝ってきたが負けてしまい、自分は土御門より一ランク下の人間に落ちてしまったんだと思い込んでしまった。
あの時は大和の一声があったから何とか冷静になれたが、今は、少し息が荒くなってきた。一ランク落ちてしまったことに劣等感に押しつぶされそうになる。
紅が思い悩んでいる時、土御門は容赦なく投げてきた。
2球目は、普通の150kmの球で、かなり甘めのインコースだった。ライジングブラッドにより強化された反射神経とミート力のある紅なら打てるボールである。
そのボールを打てない紅の精神面は不安定な状態であることを指している。
「今までの弱い自分と闘ってきて、練習して勝ったんだろう。今もこれからも勝ち続けられる。」
ベンチから大和は、紅が正気にもどるように叫んだ。
大和のおかげで一つ思い出したことがある。
たしかに自分が弱者になることもあった。それ以上にここの選手として戦えているのは自分が勝ち続けたからだ。ここで頭を真っ白にするのは、過去の逆境の中で自分を否定することになる。
冷静になってもナックルは打てないと思うが、次につなげていきたいと思えた。
「やっぱり、紅の心の支えは大和だね。」
巻島はにこやかに言った。
「それは違うさ。あいつの打たれ強さは、過去の自分を信じていることだよ。私も、最初に崩れるところを改善してあげてこそ、真のチームメイトだろ。あいつの心に1㎝でも近づきたいよ。」
大和は、どこか悲しげな表情で答えた。
「そんなの残酷だよ。たしかに紅は強いよ。でもさ、大和のおかげでさらに強くなっているよ。」
巻島はにこやかに言った。
「やっぱり、お節介だな。お前の言葉に免じて、自分の未熟さを悔いるよ。」
大和はすこし表情を和らげながら言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます