第12話 大和さんは勝負勘で球を選んでいます。


 2番バッターの大和は今のバッティングにより緊張しているが、冷静さは保っている。そして、バッターボックスに付いて礼をした。


 土御門は、ボールを球速150kmで予想通り投げてきた。 何か秘策があると思い、大和は数球観察したいと考えた


 1球目は、インコースに攻めてきたが見逃して、ストライクをとられた。キャッチャーのゴーレムは問題なく、キャッチして土御門にボールを返している。


 これを見て、大和は土御門にボールを返すという命令しかできないため、塁に出れば盗塁し放題だと思った。


 やはり紅の球より遅くて、すぐに目離れてくるだろう。この1球を受けてきたら、私の勘が早速働き、2つほど気付いた。


・1つ目は、数球は見逃して球を見ることはバレていること。

・2つ目は、この勝負には勝敗より大切な何かがある感じがすること。



 2つ目の方が大切だと直感し、勝利への執念が強いという風祭のアドバイスの矛盾が気になった。しかし、大和はこのバッティングに集中するように気合を入れなおした。


 1ストライクとカウントも気になるが、ゴロを打ってアウトをとるより、じっくりとあいつの球を引き続き観察をしたほうが勝利につながると大和は考えた。


 おそらく、決め球ではないもので、ストライクを稼いでくるのだろうと大和は予想している。


 2球目は1球目より甘めのインコースで、またストライクをとられた。大和は、この2ストライクは勝つための必要経費だと考えており、今の状況に対してそんなに慌てていない。


 大和の勘によれば次が決め球になると考えているが、土御門もどこのコースに入るかを予想できていない。どんな決め球になるのかと不安と楽しみが混ざってしまい、大和はドキドキしている。


土御門のフォームに関して大きな変化は見られていない。そのため、手からボールが離れるまで球速150kmのストレートが来ると考えていたが・・・



  球速は100km程度のふらふらと揺れているナックルボールが来た。


大和は予想外の変化球にびっくりし、手も足も出せずにストライクをとられてしまった。

バットさえ振れば振り逃げもあり得たが、ゴーレムはしっかりとキャッチしていたため、その後悔すらも無駄になってしまった。

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