第10話 紅は打たれ弱いがメンタルは強い
紅は、1球目に低めのアウトコースに投げた。
土御門はそれを待っていたと言わんばかりに、そのボールに手にだした。
毎朝、行っているようにストライクになるだろうと思ったけど、今は違う。
土御門のバットに当たり、バンと大きな力で音を立てて、ゴロになろうとしていた。
しかし、そのボールはゴロにならず、土御門のパワーにより地面の奥底まで埋まってしまった。
私たちは、ボールが埋まったことに対して唖然としてしまった。
その間に土御門はひょうひょうとベースを1塁からホームまで走っていた。
「1点もらいました」
と土御門は無愛想に言った。
土御門が打ったボールが地面に埋めて1点取ったことに対して、クレームをつけた。
「今の1点ってないだろ。ルール的に。」
紅は大きな声で怒鳴った。
「ルール的には問題ないです。ボールがフェアライン内ならどこにあっても、ヒットですよ。」
土御門は無愛想に答えた。ポケットからスマホを取り出した。
確かにそうだと思い、私はこれ以上反論できなかった。
たしかに、あいつはルールに従って戦っている。
「分かった。その1点は認めよう。お前がスマホを出したってことは、前例があるってことだよな。前例をひっくり返すのは難しい。」
と大和は淡々と述べた。
ギフティーボールは野球と違って、歴史が浅く、ギフトの多様性から例外が生まれやすい。例外が出るたびに、ルールはその都度審判が判断し、決定する。
判断は時間と労力を軽減させるため前例を基に考えることが多く、前例をひっくり返すのは難しい。
「タイムをもらってもいいか。」
と大和は土御門にお願いした。
「いいですよ。」
とこれまた、無愛想に答える。
「紅。大丈夫か。」
と急いで、マウンドに駆け付けた大和は心配そうに言った。
「大丈夫だ。こんな時だからこそ、冷静にならないと。危機的状況ほど冷静にならないと被害が大きくなるもんな。」
と紅は冷静な目をしながら、静かに答えた。
遠い過去をみている紅の姿は、大和にとって過去における紅の危機的状況を知らない自分にやるせない気持ちにさせた。
しかし、状況に対して紅が冷静になったことに対して安心もしていた。
「これが、お前の強さだよ。」
と大和は誇らしく言いながら紅の肩をたたいて、マウンドに戻った。
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