第2話
空が割れた、それは比喩でもなんでもなく、ただただ現実として起きた。
この日、人類は初めて悪魔からの侵攻を受けた。
私はとにかく走った、白音を連れて。
もう息が上がって走れなくなるまで。
「なんなのあれ…」
「わかんない」
そう言いながら私たちは、息を整えるために少し休憩し始める。
周辺は大混乱、子供から老人まで老若男女関わらず、必死で逃げようとする。
その波に巻き込まれないよう私たちは、横道の方へ向かった。
しかし、この選択が間違いだったと知るのは少し進んでからだった。
「おや、美味しそうな獲物が二つ、なんと幸先のいい!」
そう言いながら、何かが私たちに向かって降りてくる。
空から降りてきた者は、あまりにも現実離れしていた。
ファンタジーで語られるゴブリンやゾンビ、に翼をつけたような見た目の辛うじて人型を保ってはいるがそれでも絶対に現実にはいないそう断言できる見た目の化け物が、私たちの目の前に現れたのだ。
「なっ!」
そんなことを考えていると、私はいつの間にか近くの壁に叩きつけられていた。
「黒ちゃん!」
私に駆け寄ろうと、近づく白音。
だが
「逃げさせないよ?嬢ちゃん」
そう言って化け物は、白音の髪の毛を掴み上げ、舌で彼女の首筋を舐め始めた。
声にならない悲鳴をもらす白音
助けようとするも、叩きつけられた衝撃で骨が折れたのか、体が動かない、
「く、動け、動け!私!」
くそっなんでなんで!このままじゃ、白音が!
なんでもする、なんだって差し出す!だからお願い、
どうか…どうか…助けて、白音を助けて
こんなことを言っても意味がないことは、わかっていたはずなのにそう願わずにはいられなかった。
たが
「たとえそれが人間を辞めることになってもか?」
頭の中に声が響く。
幻聴だと私は思った、都合が良すぎると、それでも。
「それで白音が救えるなら」
そう言った途端私の意識がプツリと切れる。
◇◇◇
「ここは?」
そう言いながら私は体を起こす。
周りを見てもあるのは目の前の光の塊だけ。
その塊から声が聞こえた。
「貴様の中というべき場所だ」
かすれた声が部屋に響く。
「時間がない、手短でいく。」
「えっ?ちょ!」
「今から貴様と我で契約を始める。」
契約って何?どういうこと?
「説明している時間もないのだ。無理やりこの場所に貴様を連れ込んだ以上、いつ崩壊するかわからない。」
「はぁ?」
意味がわからない、私の中の世界?契約?でも、
「それで助けられるの?」
「あぁ」
「契約の条件を話す。」
「我との契約の内容は、シンプルだ、貴様に今ある我の全てを与える、代償に、我の力を使って我の復讐の果たしてほしい。」
「だが、契約と同時我と貴様は、混ざり合い変化し始める。」
「いったいどうなるの?」
「姿自体はそこまで変化はしないだろうだが、中身はおそらく別物になる。岩を砕けるほどの怪力、空を蹴り上げられる脚力、その上体内に魔石と呼ばれるものが生まれる。」
「えっとつまり、私は、人間をやめて、あの化け物と似たような存在になると?」
そんなことがありえるのだろうか?
「あぁ、なにせあれと私は、同類だからな。」
「なっ!」
どうゆうこと?本当もうわかんないことだらけである。
あの化け物のことから。
わたしの中にある謎の塊。
なおかつその塊は、あの化け物と同じときた!
しかも、そんな奴が私に力を貸してくれる?
てかそもそも復讐って何?
わかんないことで頭がいっぱいになるでも…
「やはり、こうなるか」
そう諦めたように呟く塊。
「あぁ、もうわかんない!」
でも!
「やるよ…契約」
「なっ、貴様正気か?提案しておいてなんだが、こんなのによく乗る気になったな?」
そんなことを言われても
「あなたから嘘をついてる感じはしなかった、それに白音を助けられる唯一の手段、私が断るわけないじゃない」
そう言い切る。
「…良いだろうでは我に触れろ」
「うん、わかった」
私はその塊に触れる。
「最終確認だ」
「我が貴様に与えるのは今ある我の全て、代償は、我の復讐の成就」
「あぁ、何一つ説明されてないがそれでいい」
「…始めるぞ」
そういうと彼の周りに陣が引かれ始める。
「我、汝と契約す、我の望みは、復讐の成就、代償は、契約者に今持つ我が力、記憶、経験に至るまでの全てを!」
そう言い切る。と周りの魔法陣が私を取り囲む。
そして、まるでそこに触れろと言わんばかりな、真っ赤な剣が私の前に現れる。
「それに触れれば、契約成立だ、もう貴様は人間には戻れない、それでいいんだな?」
「当たり前よ、もうとっくに覚悟は、決めた」
そう言って私はその剣に触れた。
「仮面の悪魔の名の下に契約は受理されたさぁ、目を覚ませ契約者よ」
◇◇◇
「返事をしてよ!黒ちゃん!黒ちゃん!」
白音の泣き叫ぶ声が聞こえる。
「当たりどころが悪かったぽいな、もったいない…まぁ片方は無事だしいいとするか」
私は、目をゆっくりと開け、そのまま立ち上がる。
「え?」
「なんだと?」
驚愕の声が聞こえる。
さぁ、やるぞ私、もうやるべきことは、わかっているだろう?
あの仮面の悪魔を名乗った奴の記憶が私の中にい入ってくるのが、よくわかる。
戦いしかしてこなかった幼少期の記憶
「魔王」に拾われ世界が美しい物だと知った記憶
たった一人の魔王の友人として、並び立てる様にと努力をした記憶
戦争で一騎当千の活躍をし、英雄と称えられた記憶
魔王を操られ、自我をも消され、自分では、どうすることもできなくなり、絶望した記憶
その魔王を殺してでも助けるという選択をした記憶
相打ちになりその結果を嘲笑う「狂気の悪魔」の顔を見て死んでも復讐してやると誓った記憶
最強と謳われた悪魔の記憶の全てが…
故、わかる
手を広げ、今私に必要なものの名を告げる。
「目覚めよ、ペルソナ」
その言葉に反応するように私の周りから黒い粒子が現れ形を為し始める。
黒いコート状の服に、黒い外套、そして、私の身長より大きな赤き剣。
そしてかの悪魔がかぶっていたものと少しデザインが変わった仮面。
それらを私は一瞬で纏う。
「なんなんだそれは!いや、貴様いったい何になった!」
うろたえながら化け物は、私を指を刺す。
「大切なものを守るための力を得たただそれだけのこと!」
そう言って、私は無防備の化物相手に、一瞬で近づき
一閃
記憶を便りに剣を横薙ぎで振った。
「そ、その剣は、まさか…仮面の…」
化け物の上半身と下半身がずれて行き、そのまま真っ二つとなった。
「はぁはぁ…」
纏っていたものは消え、元の服装にもどっていく。
疲れた、この一太刀を振るうのに体力のほとんどを使うのか。
「黒ちゃん!」
化物が死んだため、掴まっていた手が緩んだのだろう。
白音が私に抱きついてきた。
「大丈夫?」
「そっちこそ、いったい何がどうなってるの!」
そう白音が問いただすが、わたしは、もう答えるほどの気力は、残っていなかった。
「一旦家に帰ろう、私はもう疲れたの、説明もちゃんとするから。」
「わかった…ちゃんと話してよ!」
そう言って、私たちは、自宅へと向かう。
そして、自宅に着くと玄関で、そのまま倒れ込み、私の意識失ったた。
仮面の悪魔少女 @Sakina01
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