003

彼女とは、週1くらいのペースで会うようになった。他愛のない会話。仕事のことなど、その程度の話しかしていない。

ただ、彼女がいつも店を予約してくれたりと、店では料理を取り分けてくれたりと、尽くしてくれることはありがたかった。だた、気を使われているだけではないかと、思って疲れてしまう部分がある。それに、食事をいつもおごってくれそうになる。

毎回、割り勘でと言うのが疲れてしまっていた。


「ねえ、美樹とは上手くいってるの?」

佐紀の着信にでると、いつも本題の話を言い出す。

「お前って、もしもしの一言も言えないの?」

「うるさいわね」

「それに、桐谷さんって、先輩だろう」

「そうだよ。本人の前では、桐谷先輩って言ってる」

ため息が漏れてしまう。

「まあいいけど。騙された後遺症を癒してあがて」

また、躊躇なく切られた。

やっぱり、佐紀のことが気になってしまう。他人に気を使っているところが、さらに好きになってしまう。


「岸くんって、仕事お忙しいですか?」

「まあ、そうですね」

「今度、うちに来ませんか?」

「それは、遠慮しときます。」

分かっているけど、この誘いに乗る気がなかった。このままズルズルと関係性を続ける気がないのなら、断らないといけない。きっと、佐紀とは会社で気まずい雰囲気なるかもしれないが、

「桐谷さん、俺、佐紀のことが好きなんですよね」

言ってしまった。

「違う女の話になるんですか。」

まずいことをして言ってしまった。こういう女性は、やっぱり無理だった。最初は親切で、楽しかったけど、やっぱり重いのだ。

「申し訳ないんですが、今日で会うのは最後にしましょう。会計は俺がするので」

伝票と荷物をもって、その場から離れた。彼女は何も言ってこないし、追いかけてくることもなかった。

はっきりと言ったほうがいいとは思ったが、人によっては違うのかもしれない。


「先輩に何を言ったの?」

スマホ越しに、佐紀の怒っている声が聞こえた。

「もう会えないって言った」

「そう…」

沈黙が起きた。

「やっぱ、俺、お前のことが好きだわ。」

「馬鹿」

そう言って、通話が切られてしまった。


『別に、付き合ってもいいよ』と佐紀からメールが届いた。

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